「認知のゆがみ」は物事の捉え方に関する偏見のことです。1976年
アメリカの精神科医アーロン・ベック(Aaron Temkin Beck)が提唱した理
論です。
本号で取り上げる「思考のゆがみ」は他人の断片的な行動や発言で,相手
の気持ちを決めつけて勝手な解釈をする思考パターンについて取り上げます。
特に根拠もないのに相手の心を読んでネガティブな結論を出すという思考
の偏りです。
たとえば,道で知り合いの人に会ったとき,自分が会釈をしたのに相手が
返事もしてくれなかったとき,「あの人は自分のことを嫌っている。だから無
視したんだ」と考えて気分が落ち込んでしまう。
また,「ふだんは気さくに声をかけてくれる職場の同僚が今日は口もきいて
くれない。これは自分が何か気まずいことをしてしまったのかもしれない」と
思い悩むなど,自分にとって良くないできごとがあったときに,途中のプロセ
スや他の可能性を無視して一気に悪い結論を出してしまう思考パターンです。
このような「認知のゆがみ」に対しては,「他にも可能性はいろいろある」と
考え,冷静になる必要があります。「十人十色」ということわざがあるように,
他人が考えていることはわからなくて当然です。まして人の心の内など見抜け
るはずがありません。
したがって,相手が自分の期待に反した反応をしたときには「何か考え事で
もしているのだろう。自分に気づかなかったに違いない」などと気楽にやり過
ごすことが大事です。
株式会社comodo
特別顧問 永島清敬

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