なくならない男女の賃金格差

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男女間の賃金格差は戦前から続いていましたが,2015年9月に発足した
第3次安倍内閣の施政方針演説の中の「国民総活躍社会の実現」という言葉で男
女間の待遇差を是正する方針が明らかになりました。
これには少子高齢化という日本社会の抱える構造的問題を働き方改革の中で解
決することにより経済政策として掲げた「成長と分配の好循環」を実現しようと
する意図が含まれていました。
つまり,従来から日本社会にあった高齢者,女性,外国人といった社会的弱者
に対する偏見をなくし,一億総活躍社会を実現することで失われつつある日本の
国力を取り戻そうという試みだったと思います。
 他方,岸田文雄首相は本年5月20日の「新しい資本主義実現会議」の中で
企業に対して男女間の賃金格差の開示を義務づけ,賃金格差を解消することで
女性の活躍推進を図りたいと明言しました。具体的には女性活躍推進法を改正
し常用雇用労働者が301人以上の企業約18,000社に対して男女の賃金
を開示することを義務づけるという内容です。
 賃金の男女差別については,最近まで労働裁判で取り上げられた事件が少な
くありません。参考までに以下に事件名を記載しておきますので,興味のある
方は「労働経済判例速報」等で事件の詳細をご確認ください。
1994年三陽物産事件(東京地裁),1996年丸子警報器事件(長野地裁),
1999年塩野義製薬事件(大阪地裁),2000年芝信用金庫事件(東京高
裁),2002年野村證券事件(東京地裁),2003年昭和シェル石油男女差
別事件(東京地裁),2004年岡谷鋼機事件(名古屋地裁),2005年住友
金属工業事件(大阪地裁)です。
いずれの事件も女性であることを理由に賃金,昇給,昇進,昇格等で差別的
 取り扱いをされたとして従業員(原告)が会社に損害賠償と慰謝料の請求を行
い,原告が勝訴しています。
 また,2018年6月に国会で成立した働き方改革関連法は翌年から順次改
正法として施行されています。働き方改革関連法の最重要課題は長時間労働の
是正と同一労働同一賃金です。同一労働同一賃金ルールは,2020年に大企
業に対して,2021年には中小企業に対して正規社員と非正規社員間の不合
理な待遇差を禁じることを義務づけたパートタイム・有期雇用労働法の施行と
いう形で具体化しました。
 しかし,こうした法改正により企業に対して正規・非正規間における不合理
な待遇差や正社員間の男女別賃金格差を是正する措置をとっても現行給与制度
や人事制度全般を改正しようとする企業数は決して多くないといった統計があ
ります。
2020年10月に実施した独立行政法人 労働政策研究・研修機構の「民
間企業2万社に対して同一労働同一賃金ルールに関する企業の対応状況調査結
果」では見直しを行ったか現在実施中と回答した企業は45%程度にとどまっ
ています。調査時期が1年半前とはいえ,このような数字から企業経営者の意
識の低さが伺えます。
 同一労働同一賃金ルールに関する裁判は2018年6月1日に最高裁判決が
出たハマキョウレックス事件や長澤運輸事件に見るように,正規・非正規間の
諸手当支給に関する待遇差を不合理で違法と判断したことを他山の石として従
業員に訴訟を起こされてから考えるのではなく,経営者や管理職は人材活用の
前提として従業員が働きやすいと感じる職場環境を提供しているかどうかにつ
いて自問自答する必要があるのではないかと思います。
古の昔から「企業は人なり」といわれてきましたが,自社の従業員が今
 の雇用・労働環境を「働きやすい」,「働き甲斐がある」環境と感じている
か,今一度考えてみる必要があるのではないでしょうか。
社員が働きやすいと感じる人事制度改革を目指す人事制度コンサルティ
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特別顧問 永島清敬

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