ジェンダー問題について労働法制史の観点から論述

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 2021年2月3日東京五輪大会組織委員会の森会長が日本オリン
ピック委員会臨時評議員会で女性蔑視発言を行い,ジェンダー問題が再燃しま
した。本号ではジェンダー不平等といわれる社会的文化的性差別問題について
取り上げます。
 森会長の発言は「女性の話は長い」,「女性は競争意識が強いため誰か1人が
手を挙げると自分も言わなきゃいけないと思う」などと揶揄する発言であり,
女性を理由に男性と差別する発言とされました。この手の発言は日頃から思っ
ていないと出ないことから,世界中の批判を浴びることになったと思われます。
 他方,3月31日に開かれた世界経済フォーラムが発表した各国の男女差別
を示すジェンダーギャップ指数は,日本が156ヵ国中120位と先進国中の
最下位を続けています。
 かつて女性差別の社会慣行は世界的に存在していましたが,1979年の
国連総会における女子差別撤廃条約採択以降は各国とも差別撤廃に積極的な
取り組みを見せてきました。
他方日本は,この条約に批准する条件とされた女性差別禁止の立法措置とし
て1985年に男女雇用機会均等法を制定しましたが,多くの大企業ではそれ
までの男女別賃金を改めず,新たに「総合職と一般職」という「コース別雇用
管理」の仕組みを導入し対応しました。しかし,その中身は単に男性社員を総
合職,女性社員を一般職に置き換えたものにすぎず,「総合職」は基幹業務を
担当する社員,「一般職」は定型的補助業務を担当する社員とする形だけの定
義でした。
こうした産業界の動きに対して,厚労省は「コース区分の合理性がなくコース
間の処遇格差の納得性が低い」として2013年12月,「コース別雇用管理に
関する指針」という告示を出しました。このガイドラインでは,コース別雇用管
理を導入している企業に対して次の3点を義務づけたのが特徴です。
①コース別雇用管理の必要性と処遇の合理性の検討
②労働者のキャリア設計に必要な職務内容と能力の明記と労働者に対する十分
な説明
③配置,昇進,教育,職種変更において男女別の運用を行わないこと
 また現在までコース別雇用管理制度に関する違法判決は続いていますが,他方
で総合職と一般職の区分を廃止する企業も多く見られます。日興コーディアル
グループは2003年に総合職,一般職の区分廃止,本年(2021年)下期に
はみずほフィナンシャルグループが総合職と一般職の区分を廃止すると発表しま
した。
 そもそも性差別禁止は,終戦後1947年に制定した日本国憲法の基本的理念
になっています。すなわち,憲法第13条は個人の尊厳について規定し,第14
条では「すべて国民は,法の下に平等であって,人種,信条,性別,社会的身又
は門地により政治的,経済的又は社会的関係において差別されない」と定めてい
ます。
また,男女雇用機会均等法は日本国憲法の理念(第13条および第14条)に
則り雇用において性差別を禁止することを目的にした法律といえます。
 以上見てきたように,労働分野において性差別をなくすことは日本の最高法規
である日本国憲法に定めた基本原則といえます。しかし,個々の企業内にはコー
ス別雇用管理などのレガシーな人事制度や規則が残存していることも事実です。
現在日本は,従来の働き方を見直し,働く人がそれぞれの事情に応じた多様な
働き方を選択できる社会の実現をめざす法改正を行っています。このような働き
方改革関連法の施行は自社の人事制度や人事施策について見直す好機といえます。

株式会社comodo
特別顧問 永島清敬

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