ネットトラブルと企業のリスク管理

人材育成ブログ

 LINE利用者のチャット情報が中国企業に把握されていたということが問題
になりました。日本のLINE経営者の国家情報法に対する認識が甘く,個人情
報の流出リスクについて問題意識を持たなかったことが原因です。
このようなネットトラブルは,2000年以降ソーシャルメディア利用者の急
増とともに激増しています。
他方ここ数年,スマホの急速な普及によって情報発信の楽しさを覚えたネット
ユーザーによる悪ふざけが社会問題として取り上げられました。
 社員のソーシャルメディアの不適切な利用によって引き起こされた法人のレピ
ュテーション(風評)リスクや情報漏洩リスクは後を絶たないどころか深刻さが
増してきています。
 ファーストフード店のアルバイト定員が悪乗りで冷蔵庫に入ったり,商品に異
物を混入したりする動画をSNSに流して炎上し,不買運動に発展するなどの騒
動を起こしました。
こうしたネットトラブルは企業価値を著しく低下させることになります。また,
風評被害に逢った企業が信頼回復するまでには相当年月がかかることがこれまで
の事例でわかっています。
 一方,従業員が引き起こしたネットトラブルの責任は民法第715条に定める
使用者責任として企業が負うことになります。これは,従業員のネット上の不適
切な書き込みが他者の名誉棄損,情報漏洩につながった場合に問われる不法行為,
契約上の債務不履行に基づくものです。
 さらに取締役は,民法第644条に規定する「受任者の善管注意義務違反」と
して企業と連帯して責任を負うことになっています。会社法第423条には「役員
は従業員が問題を起こした時の損害賠償責任を負う」と規定しています。ソーシャ
ルメディアの利用に関してリスクを発生させないような態勢をとらなかったこと
による損害賠償責任という意味です。
 つまり,企業はコンプライアンス違反を侵さず社会に貢献し続けるためにステー
クホルダー(利害関係者)の満足度を向上させるだけでなく,リスク管理を徹底す
必要があるということです。
 企業は社会に有益な製品やサービスを提供するだけでなく,事業運営において
発生するリスクを抑制しコンプライアンス経営を実現することが求められています。
企業を取り巻く環境が激変する中で,ソーシャルメディアの普及に伴うネット
トラブルを予防するためリスク管理体制の見直しと再構築は喫緊の課題といえます。
ネットトラブルの対処法としては,ネット上の書き込みの事実,デマを問わず適宜
適切に情報開示を行い,誠実に対応する必要があります。そうすることによって,
ステークホルダー(利害関係者)は冷静に対応することができます。
 社会にはさまざまなリスクが存在し,企業は事業活動の過程で多くのリスクにさ
らされます。こうした社会環境の中で予想されるリスクの認識,評価,対応を考え
たリスクマネジメントがこれからの企業経営の鍵を握ることになるでしょう。
 新型コロナウイルスの感染が拡大する中,働き方改革関連法の施行による非正規
社員の待遇改善問題,高年齢者雇用安定法改正に伴う70歳までの高齢者就業義務
など企業に求められる課題が山積しています。こうした中で,経営者は1つひとつ
確実に問題の整理と解決を図っていく必要があります。

株式会社comodo
特別顧問 永島清敬

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