判例(「同一労働同一賃金」に関する最高裁判決)に見る,司法と立法の保守性と革新性について

人材育成ブログ

※2020年11月24日現在の記事
2020年10月15日の日本郵便3事件の最高裁判決を以て,「同一労働同賃金」に関する司法の判断が確定しました。ご存じのように同一労働同一賃金理論は2018年6月に成立した働き方改革関連法の中心テーマの1つで,長時間労働の是正とともに前安倍政権の労働問題の目玉政策といえるものです。

 同一労働同一賃金を争点にした最高裁判断は,労働契約法20条解釈リーディングケースといわれている2018年6月1日のハマキョウレックス事件と長澤運輸事件判決があり,これらの判断が正社員と非正社員との間の不合理な待遇差を判断する基準になっていました。本年10月13日のメトロコマース事件と大阪医科薬科大学事件,同年10月15日の日本郵便3事件における最高裁判決によって
正社員と非正社員間のすべての労働条件における待遇差に関する不合理性の判断が確定したことになります。

 つまり社員と非正社員の待遇差の不合理性は,職務内容と責任の程度,配置変更の範囲.その他事情を考慮して判断するが,これらが「同一または同等」の場合には
(1)労働契約法で均等待遇,均衡待遇が義務づけられたこと
(2)労働条件の項目ごとに主旨・目的に照らして判断することになりました。
7つの最高裁判決の結論は以下のとおりです。
(1)正社員と非正社員間に基本給,
諸手当(家族手当,扶養手当,住宅手当,作業手当,給食手当,皆勤手当,通勤手当),
特別休暇(病気休暇,夏期冬期休暇),
特殊手当(年末年始勤務手当,早出勤務手当,祝日給,夏期年末手当,夜間特別勤務手当等)について不合理な待遇差を設けることは禁止すると判断しました。
しかし,(2)賞与と退職金に関しては,長期間勤務することを前提に正社員の確保と定着を図る目的で支給するため非正社員に支給しないことに不合理性はないとしました。この最高裁判決では,奇しくも司法の下した判旨が政権(立法)のめざす働き方改革の大義に反する結果になったといえます。すなわち,現下の日本の抱える少子高齢化,生産年齢人口の減少,長時間労働という3つの国家的問題の解決策として進めてきた「同一労働同一賃金」理論の根幹にある労働の価値を時間軸から成果軸に改める改革が,最高裁裁判官によって時間軸を重視する判断に引き戻された格好になりました。そこには裁判官の旧態依然とした主観が見られます。
 今後,司法改革がどこまで進むかはわかりませんが,少なくとも裁判官が時代を読む力を身につけることが望まれます。

株式会社comodo
特別顧問 永島清敬

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