労働法解釈「改正高年齢者雇用安定法」施行の背景について

人事制度

 本年(2021年)4月1日に施行される「改正高年齢者雇用安定法」は,
少子高齢化に伴う労働力人口の不足解消と近い将来の年金受給開始年齢の引
上げを目的にした法改正です。この2つの問題を掘り下げると日本固有の社
会的慣行の問題に突き当ります。
 それは,日本社会が「年齢」基準に社会制度や人事制度を設計してきたと
いう根源的問題です。本号ではその歴史的背景について紹介し,現行人事制度
の改革を行うことの必要性について論述いたします。
 現行高年齢者雇用安定法は,1971年制定の中高年齢者雇用促進法が45
歳以上の中高年齢者の雇用促進を目的にした立法措置でしたが,高年齢者の雇
用確保にはつながらなかったため,1986年に55歳以上の高年齢者雇用を
確保する目的で改称された法律です。この法律(略称「高年法」)では,それ
まで日本の労使慣行として確立されてきた55歳定年を廃止し,60歳定年を
努力義務として企業に課すことが目的でした。
 さらに1990年高年法を改正し,60歳定年という努力義務に加えて定年
後65歳までの再雇用を努力義務としました。
 また,1994年改正の高年法では60歳未満の定年制の禁止が明記されま
した。この間,日本の高齢化のスピードは世界最高水準で進み続けてきました。
 内閣府発表の「令和元年版高齢社会白書」によると,2019年10月現在
の高齢化率(総人口に占める65歳以上者の割合)は28.4%に達し,20
36年には33.3%(総人口3人に1人)になると推計されています。
 「高齢者」の定義も55歳から60歳に変わり,2018年からは65歳以
上の者を指すようになりました。
WHOの定義では高齢化率が7%以上を「高齢化社会」と呼び,14%以上
が「高齢社会」,21%以上になると「超高齢社会」と呼んでいるため,日本は
既に「超高齢社会」をまっしぐらに進んでいることになります。
 ちなみに,世界の高齢化率を国別に見ると,アメリカ14.6%,イギリス
18%,ドイツ21.1%,中国9.3%,インド5.6%(2015年統計)
などとなっています。
 一方,高年法は2004年改正で現在の高年齢者雇用確保措置(65歳までの
再雇用を努力義務とし,定年引上げ,定年制廃止,継続雇用制度の導入のいず
れかの措置)を講じるよう企業に定めました。
 さらに2012年の改正では60歳定年者の希望者全員を65歳まで継続雇用
することが義務づけられました。そして今回(2021年)の改正で定年が65
歳に引き上げられ,同時に70歳までの就業確保措置が企業に課せられることに
なりました。
このように,日本の高齢化の推移と高年齢者雇用安定法の改正の歴史から今後
企業が「社員の高齢化」にどのように対処すればよいかが見えてくると思います。
 つまり,高年法改正により定年延長や継続雇用のメリットは,引き続き経験者
を雇用することによる若手人材の育成が考えられます。いわゆる技術の伝承です。
 反面,デメリットとして人件費の増加,ポストが空かず若手人材の成長機会を
奪うなどが考えられます。
 この問題の根底には,年齢や役職基準で処遇を決定してきた人事制度(職能資
格制度)の限界を示しています。
日本の少子高齢化は止めることのできない不可逆的プロセスを辿っています。
改正高年法は,「年齢」を基軸にしてきた従来の人事制度から「役割」を基軸に
処遇を決定する役割等級制度に変えるターニングポイントといえます。

株式会社comodo
特別顧問 永島清敬

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