日本の高齢化問題について考察し,その本質を探る

人事制度

 本年4月,改正高年齢者雇用安定法(略称「高年法」)が施行されました。
高年法は1971年に制定した中高年齢者雇用促進法がその前身で,それを
改称した法律です。それから今日まで50年間に6回の改正を行っています。
 では,なぜ頻繁に法改正を行う必要があったのか?という観点から論述し
ていきたいと思います。
1つは,日本人の平均寿命が伸びていることが理由に挙げられます。19
50年における日本人の平均寿命は男性58歳,女性61歳でしたが,20
19年では男性が23歳延びて81歳に女性は26歳延びて87歳になって
います。寿命が伸びることは人類学的には好ましいことといえます。
つまり,食生活の改善と医療技術の進歩によって乳幼児や若年者の死亡率
が低下したことによって平均寿命が伸びているため,問題視する必要はあり
ません。
 一方,高齢化率(総人口に占める65歳以上者の割合)の推移を国勢調査と
総務省の人口推計で見ると,1950年には4.9%だったのが2019年
には28.4%まで伸びています。この数字は国民の4人に1人以上が高齢
者であることを示しています。さらに2036年にはこの割合が33.3%
になるといわれています。実に国民の3人に1人が高齢者という推計値が発
表されているのです。
 これら2つの統計数字から読めることは,日本の高齢化のスピードは諸外
国に比べて著しく速く,少子化の影響もあり生産活動に従事できる年齢の生
産年齢人口(15歳~64歳の総数)が減少することが予想されています。
この結果,GDP(国内総生産)は下降の一途をたどることになります。
また高齢者の増加は,年金,健康保険といった社会保険の負担増により経
済発展のマイナス要因になります。もともと社会保険制度や公的年金制度は
人口増加による経済発展を前提にした仕組みであるため,財政健全化のため
には労働力人口を増やすと同時に年金支給開始年齢の引上げを行う必要があ
ります。これらのことから日本の高齢化の問題点を整理すると,1つは財政上
の問題である社会保障制度の財源枯渇の問題であり早急に解決すべきテーマ
です。本年4月に改正した高年齢者雇用安定法の趣旨が65歳定年の定着と
70歳までの就業確保措置を企業に努力義務として課したことからも,働く
意欲,能力,体力のある高齢者にはなるべく長く働いてもらうことを期待す
るとともに年金支給開始時期を引き上げて年金財政を維持しようとする意図
があります。
 高齢化問題の2つ目は,企業が本気になって人事制度改革に取り組むかど
うかという問題です。従来日本の多くの企業が導入し,部分的な改訂を繰り
返してきた職能資格制度という人事制度は,「年齢」を基軸に給与,賞与,
退職金などの賃金や処遇を決める仕組みです。また,現在のように超高齢社
会が進行し,それに付髄して定年年齢を引き上げる法改正が頻繁に行われる
社会環境下でも依然レガシーな人事制度を使い続けている企業は少なくあり
ません。
日本の人事制度はその時々の社会経済環境を反映して進化し続けてきまし
た。現在のように経営環境変化のスピードが著しく速く,それに呼応して
マーケットニースが変化する時代では,いつまでもレガシーな仕組みを温存
し続ける理由はないといえます。社員の処遇を決定する仕組みの根幹に年齢
を設定する必要性や合理性はないからです。等級制度に「標準滞留年数」を
入れ,春になると定昇(年齢給,勤続給による自動昇給と評価昇給)を恒例
行事として行ってきた日本的悪しき慣行は,制度疲労を起こし最早限界に達
しています。
 今こそ人事制度のプラットフォームを年功基軸から役割基軸に変更し,経
営計画の達成と社員のキャリア形成のバランスを重視した仕組みの役割等級
制度に変える好機ではないでしょうか。

株式会社comodo
特別顧問 永島清敬

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