「同一労働同一賃金ルールにおける家族手当支給の違法性」

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 2021年4月1日から全面施行になった「同一労働同一賃金ルール」(法律名は「パートタイム有期雇用労働法」)の個別企業における対応状況があまり進んでいないことが独立行政法人労働政策研究・研修機構(略称「JILPT」)の調査で浮き彫りになりました。
 本調査はJILPTが2020年11月に全国2万社の企業を対象に行ったもので,昨年11月に公表されました。それによると同一労働同一賃金ルールに対する企業の対応は,「検討中」 を含めても未だ5割に届いていないことがわかります。
 未対応の理由は書かれていませんが,法律の主旨である「正規・非正規社員間の不合理な待遇差を禁ずる」ということはわかっていても,具体的に「何が問題で何をどうすればよいのか」という判断は企業側に任されているため,判断基準が裁判例によって徐々にわかってきたこと,パート有期法には罰則規定がないため違反をしても企業に直接影響があると思っていないことなどが考えられます。
 実際,今各地の裁判所で起きている同一労働同一賃金訴訟は,在職中は我慢をしてきた原告の非正規社員が退職を機に内部告発や会社を告訴したことにより問題が顕在化したことがわかっています。裁判では民法の不法行為に対する損害賠償請求により,平均1人100万円程度の支払いが被告企業に命じられています。原告が1人の場合は企業側の損害リスクは少額で済みますが,集団訴訟の場合には数千万円の賠償金支払いの命令が下ることもあります。
 同一労働同一賃金ルールでは,賃金の支給項目ごとに支給目的で判断されます。つまり,「手当」であれば支給目的は以下のようになるため,正社員に支給し非正社員に支給しないという理屈はとおらないと考えるのが妥当です。
 家族手当は「扶養家族の生活費補助」,住宅手当は「住宅費負担に対する補助」,精皆勤手当は「出勤率の高さを会社貢献度の目安とした奨励金」,地域手当は「都市と地方の生活費格差の補助」,通勤手当は「自宅から職場までの往復通勤費補助」などが各手当の支給目的です。これら手当の支給目的から正規・非正規間で支給格差をつける合理的理由はないと判断されます。
 2020年10月15日の日本郵便事件最高裁判決では,家族手当を正社員にのみ支給し,非正規社員である契約社員に支給しないのは「同一労働同一賃金ルールに反する不合理な待遇差」として違法判決が下りています。
 このように,会社は予想できるリスクをいつまでも放置し先送りした結果,非正社員から「正社員との待遇に不合理な格差がある」と訴えられています。経営者は原告から訴えられてから慌てて対策をとるような計画性のない場当たり的な対応をとるのではなく,日頃から将来のリスクを洗い出し対策を講
じておく用意周到さが求められます。
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株式会社comodo
特別顧問 永島清敬

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