人事制度の不可逆性について

人事制度

長年,顧客企業の人事制度改革を行ってきて思うことは,人事制度は不可逆プロセスを辿っているということです。人事制度はその時々の社会経済的背景を反映した仕組みであるため,制度の根幹を流れるポリシーは変化します。そのため,過去の人事制度より改革後の人事制度の方が会社と社員の納得性が高い仕組みになっているといえます。私は2003年9月に大塚商会と日本IBM共催の公開セミナーで「成果主義人事制度の限界とこれからの人事制度」というテーマで講演しました。そこでは「人事制度発展段階説」を唱えました。日本の人事制度は約15年ごとにレベルアップしているという内容です。会社が成長し発展していくためには必要な人材要件が変化します。そのため人材を処遇する仕組みである人事制度も変革せざるを得ないということです。近年,AIやIoTなどの技術革新により産業構造が大きく変化する中で,求められる人材像もかつての問題解決型人材から問題発見型人材へと変化しました。こうした人材要件を人事制度という仕組みの中にうまく取り入れていくことが今後の会社の命運を左右するといって過言ではないのです。ところが,筆者が訪問する会社の多くは,前回人事制度の改訂を行ってから10年程経っています。「十年ひと昔」というように,10年前に求められていた人材要件や仕事の仕方はその後の技術進歩により大きく変化し,かつての知識・経験は無用の長物と化してしまいます。

戦後政府は経済復興を第一に考え,企業は再建をめざし,労働者は生活の安定とその土台となる雇用確保を求めたのが1945年から1960年の15年間です。必然的に人事制度は生活主義をポリシーとし給与は年齢給を取っていました。その後の1960年から1975年の15年間は高度経済成長からオイルショックまで年功主義に支えられた総合勘案決定給がとられていました。1975年からバブル崩壊の1990年までは能力を基準に格付けし定昇制度を仕組みの根幹に置く職能資格制度全盛期といえます。そして,バブル崩壊後は景気の長期低迷期に即した成果主義人事制度を導入する企業が多数を占めましたが,その中身は成果・実績を判断する評価項目に目標管理制度を導入しただけで仕組みそのものは職能資格制度を踏襲した内容でした。そして,失われた20年後に私が勧める役割等級制度が主流になりつつあります。

アメリカに本社を置く外資系企業の職務等級制度が仕事を基軸に給与を決定するのに対して,役割等級制度は経営計画達成の役割を組織に分業分担したものです。世間では,「役割」は業務分掌規程における「担当業務」であると思い込んでいる人が多く,本来の「役割」とは次元が違います。この「経営計画達成の役割」が「役割等級基準表」に明記されて初めて会社が社員に求める期待値が明確になるとともに,社員にとってライフワークの実現に結びつく「キャリア形成」が図れる仕組みになります。

他方,こうした各人の役割を等級という形で達成目標の階段にした「役割等級基準表」や会社の規則・ルールは時代とともに形骸化するものです。したがって,現状に合わなくなった仕組みやルール,規則などはそれぞれの時代に合った新しい仕組みに変えていく必要があるのです。一度つくった仕組みやルールを後生大事に取っておくことは「今を生きる」会社やビジネスマンの妨げになります。「今日を生きる」現代人が働きやすい環境でのびのびと働ける環境をつくるのは人事制度改革を実践する経営者の意思決定にかかっているのです。

株式会社comodo
特別顧問 永島清敬

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