労働法解釈「雇用調整助成金」の歴史的役割の変遷

人材育成ブログ

改正労働法について解釈を行っていきます。法律は条文解釈が裁判や労使紛争の争点になります。その意味で法解釈は法律を読み解くための重要なポイントになります。
 筆者は大学時代授業に出席はしましたが,4年間で1ページもノートをとらず,毎回90分授業の終了時に手帳に1頁分の授業内容の解釈を行ってメモにしていました。それ以来,人との会話も終了後にメモを残す習慣が身についています。
 こうした習慣が読者の皆様の参考になれば幸いです。 ちなみに,世の中に「労働法」という法律はありません。世間でいう「労働法」は,労働関係法規の総称なのです。現在,主な労働法は21あります。そのうちから改正法など旬な法律を取り上げて解説していきたいと思います。

厚労省が1月8日に発表した1都3県(東京都,埼玉県,千葉県,神奈川県)に対する緊急事態宣言は,飲食店等の営業時間の短縮,出勤者の7割削減をめざすテレワークの推進,イベントの収容人数の制限等を内容としていますが,緊急事態宣言に伴って景気の悪化が予想されます。
 こうした事態に対して厚労省は,「新型コロナウイルス感染症に係る」という枕詞(まくらことば)を付けて雇用調整助成金の特例措置を拡大することを公表しました。これは,コロナウイルスに感染した社員を休業させる間の所得保障という意味で雇用調整助成金の助成率を2/3から4/5にするとともに,解雇を回避する企業に対しては3/4から10/10に引き上げることにした措置です。
 なお,雇用調整助成金支給の法的根拠は,雇用保険法第62条と63条にあります。また雇用保険の目的は,労働者の失業対策と能力開発の2つであり,事業主に助成金を支給して雇用を安定させる意図です。次に,今まで雇用調整助成金はどのような背景において支給されてきたか,ということについて振り返ってみましょう。
1991年3月に起きたバルブ崩壊とその後長期間にわたる景気低迷期に日本の主要企業は大規模なリストラを行いました。その時は,雇用対策法に基づく「再就職援助計画」を作成し,ハローワークの認定を受けた企業が1人40万円を限度として再就職支援給付金の受給がありました。認定を受けた企業はその資金に加算して再就職支援会社に再就職支援サービスを委託しました。
2012年以降の第二次安倍内閣における成長戦略では「成長分野への人材移動による競争力の強化と経済成長の実現」を労働政策の柱として,政府が民間企業に労働移動を奨励したのが,「労働移動支援助成金」という措置です。このように雇用調整助成金は,その時々の社会経済情勢の変動を受けて名称や目的を変えて利用されてきたという歴史があります。

株式会社comodo
特別顧問 永島清敬

人事制度に関するご相談はお気軽に
石垣敦章 080-3574-4261