「総論賛成各論反対の心理」について考察

人事制度

 2000年以降国会議員の発言や民間企業の人材要件に「グローバル人材」
という言葉がしばしば使われてきました。これは経産省と文科省が21世紀に
求められる人材を定義したことがきっかけになっています。
経済のグローバル化が進み,世界の競争市場の中で日本人がアイデンティテ
ィーを発揮していくためには,異なる言語,文化,価値観を乗り越えて世界の
人たちと関係性を構築する必要があります。そのためにはコミュニケーション
能力,協調性,価値創造力を持つ人材の育成が必要と考えたネーミングです。
 こうした社会経済情勢を背景にして,筆者が以前勤務していた会社では,
当時多くの企業から人事制度改革案件をいただき,企業内に立ち上げた人事制
度改革プロジェクトに対して毎週のようにコンサルティングを行っていました。
多い時は同時に7社程度のプロジェクトを進めなくてはならないこともありま
した。
 人事制度改革の進め方はいろいろありますが,現在は組織の各部門代表によ
るプロジェクトを結成して進める方法が主流になっています。
前置きが長くなりましたが,このプロジェクトを進めていく中でよく起きる
話をご紹介します。
役割等級制度の構築で経営側の人材要件である「グローバル人材の育成」を
「役割等級基準書」に組み入れることが問題になったことを覚えています。
メンバーの大半は会社の事業展開を考えてグローバル人材を育成することに
は賛成ですが,人材要件として「役割等級基準書」の各等級にTOEICの点数を
書き入れることは反対なのです。語学力が必要なことは頭ではわかっていても,
それを自分のこととして考えるとき反対する気持ちが沸くのでしょう。
これではいつまでたっても日本企業に「グローバル人材」は育ちません。
 同様に2010年以降の人材要件はどこの会社の経営者も一様に「自主・自律
型人材」と声をそろえて言いますが,いざ「役割等級基準書」に書き入れる段に
なると「部門の基本方針に基づき上司の指揮監督の下,日常継続的に発生する業
務を正確に行う」と書くのがいいという意見が多数を占めます。
 人はいくら正論を言っていてもいざ自分のことになると,まったく逆の心理が
働くのかもしれません。また,長い人生の中では時々自分の言行不一致に気づく
ことがあるかもしれません。しかしビジネス社会では,時として言行不一致は
相手先企業の信頼を損ねることになります。そうならないようにするためには,
安易に総論に賛成する前に総論から導き出される各論を想定し,その各論に賛成
か反対かを自問自答してから改めて総論について賛否を表明することが重要では
ないかと思います。

株式会社comodo
特別顧問 永島清敬

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