2種類の人事制度を比較しました

人事制度

株式会社comodo特別顧問・経営コンサルタント
永 島 清 敬

人事制度改革を行う理由

  戦後から国や地方の行政機関の機能不全を解消する行政改革が実行されてきました。行政改革は現状に合わなくなった規制を緩和・撤廃して新しいルールを作ることによって行政機関が住民に提供するサービスの効率化を図ることが目的です。
 民間企業の人事制度改革も時代の変化に呼応し社員が働きやすいと感じる環境
をつくり出すため旧態依然とした人事制度を時代の要求に合った仕組みに変えることをいいます。
現在日本企業が導入している主な人事制度は,職能資格制度,職務等級制度,役割等級制度の3つですが,職能資格制度は高度成長期に仕組みが完成した「人(ひと)基準」のレガシーな日本型人事制度です。社員の職務遂行能力を定型業務を遂行するレベルから高度の判断を必要とする業務レベルまで分類し,等級格づけした職能定義書に基づく仕組みになっています。
しかし,現在はデジタル技術が発達し,AIが定型業務を瞬時にこなす時代です。単純な定型業務がAIに取って代わられる時代になって,社員が行う業務はAIでは対応できない分野の開発業務や対人コミュニケーション・スキルを必要とする業務,ゼロから創造する業務などに限られてきたといえます。
一方,職能資格制度はレガシーな年功(年齢と勤続)を基軸として構築した仕組みであるため,当時は新規ビジネスモデルを創造する社員の処遇は想定外だったわけです。
 給与制度は新卒から定年までの必要生計費を基準に結婚,出産,配偶者と子供の扶養,昇進といったライフステージに基づいた設計思想で構築されています。
また,職能資格制度の中心的役割を果たす定昇制度は,年齢が1才上がれば
1才分の能力伸長に見合う昇給が保障される性善説に立った制度です。
このようなレガシーな思考に対して,現在は夫婦共働き世帯が主流であるだけでなく,年齢と共に自動昇給する仕組みは会社業績とは無関係であるため,バブル崩壊以降は家族手当や住宅手当のような労働の対価と認められない諸手当の廃止とともに定昇制度を廃止する企業が増えています。
こうした属人的生活給を給与体系に持つ人事制度は,その根底に「会社(社長)は社員を家族の一員として一生涯生活の面倒をみるべきだ」という家族主義思想があるため,「業績に貢献したい」,「成果を上げ,そのことを正当に評価してもらいたい」と考え,そこにやりがいや生きがいを感じるモラールの高い社員の意気込みを低下させ,優秀社員から会社を見限って社外に転出することになります。
年齢により給与が決まり,勤続年数により昇進や昇格が実現する思想を内蔵した人事制度が職能資格制度です。
経済成長が鈍化し,コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻が経済のマイナス要因となっている時代背景の中,社員の努力が報われる仕組みが保障される人事制度が納得性を高めます。レガシーな思想を人事制度の根幹に持つ職能資格制度を改革することをお勧めいたします。
他方,最近よく耳にする人事制度に「ジョブ型人事制度」というものがあります。
「ジョブ型人事制度」は実際に仕組みが存在するかどうかは確証が持てません
が,今から79年前の1943年にアメリカのエドワード・ヘイ氏が考案した人事制度(英語名:ジョブ・グレーディング・システム,別名:ヘイ・システム)が世界標準の職務を基準に等級を格づけした職務等級制度です。
この人事制度のコンセプトはアメリカ的合理主義に基づいているため,すべての職務(ジョブ)にヘイポイントと呼ばれる点数がつけられています。このヘイポインを持つ社員は転職や転勤で世界中のどの企業に行ってもヘイ・システムを導入している企業であればパーソナル・ポイントとして通用します。つまり,転職先において初任給を決定する際にヘイポイントを提示すれば同等の年収が保障されるという普遍性の高い仕組みになっています。
ヘイ・システムによる職務等級制度は,3つの評価軸(Know How /Problem Solving /Accountability)と8つの評価要素(省略)から構成される職務分析ツールにより,どのような職務でもヘイポイントに換算できるため職務等級を決定することができます。
 このように,ヘイ・システムに基づく職務等級制度は合理性と歴史的信頼性を持った素晴らしい人事制度の仕組みといえます。日本に支社や支店がある外資系企業約4,000社のうちの90%に当たる3,600社程度はアメリカ系企業であるため,ヘイ・システムを導入していると思って間違いありません。
 しかし,いくら厳密に合理性と精密性を兼ね備えた仕組みであっても時代の変化に伴う改革を行わなければ形骸化してしまいます。
また,職務評価を行う際に作成する職務記述書(ジョブディスクリプションシート)の書き方によって職務評価が違ってくるという欠点があります。つまり,現職者が自身の職務内容を職務記述書に記入するため,書き方の差によって評価ポイントに差がつくことになります。記述内容や記述方法が書き手の裁量に委ねられるため相違が出てしまうのです。
また,現在のようにデジタル技術が進化する中では担当業務の変化のスピードが速くなるため,変化の都度職務記述書の書き換えを行い,その結果職務評価が大きく変われば職務等級を変える必要があります。
 このことは他の人事制度も同様ですが,職務等級制度の場合は特に職務記述書の見直しを都度行う必要があり手間がかかるというデメリットがあります。
 今回は,人事制度の中の職能資格制度と職務等級制度の違いについて解説いたしました。

動画でも解説しておりますので、合わせてご確認ください。

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