繰り返す集中豪雨被害と企業のリストラ

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 毎年7月上旬に集中豪雨による被害が後を絶ちません。2020年に
熊本県を襲った大雨によって球磨川が氾濫し,逃げ遅れた60人以上の
住民が犠牲になった熊本豪雨は未だ記憶に新しい事件です。
このような豪雨による災害は2017年から5年間連続で毎年7月に
発生し,多くの犠牲者を出してきました。
こうした自然災害は事前に予測し対策をとれば,被害を最小限にとど
めることができそうなものですが,毎年続けて同様の災害を被るという
ことは天候の予測や原因の究明が不十分であることを物語っています。

 考えてみれば高校や大学で学ぶ生物学や考古学などは目の前の事実や
現象を見つめて理解するだけの学問であり,学問本来の目的である「ど
うしてそうなるのか?」という研究が遅れているように思えます。
集中豪雨の研究では,「梅雨の末期に大雨の条件がそろう」とか「7月
ごろ中国南部の雨域が北上して日本上空の大気が不安定になり,大量の
水蒸気が日本に流れ込むため,積乱雲の発達を促し同じ地域に大雨が続く
線状降水帯ができる」などと天気予報士が説明しています。
しかし,この説明はただあるがままの状況を説明しただけで,「なぜ7
月に雨域が北上するのか?」とか「雨域が北上するとなぜ大気が不安定に
なるのか?」という基本的な原因は説明できていません。
つまり,自然災害の研究は日本が遅れているのか世界的にもそういえる
のかはわかりませんが,未解明な分野が多い領域といえます。
対して,企業のリストラは社会現象といって過言ではないくらい頻繁に
繰り返されてきました。自然現象が人間の英知を超える未知な分野である
のに対して,社会現象は人間に起因する現象といえます。

 すべての現象には原因があって結果が伴うものです。このことはイギリ
スの作家ジェームズ・アレンが執筆したベストセラー『「原因」と「結果」
の法則』に書かれているのでご存じの方も多いと思います。
現在日本の景気は長引くコロナ禍と円安に伴う輸入原材料の高騰で,中
小企業の経営は厳しさが続いています。こうした中では従業員の人件費負
担が重く経営にのしかかってくるため,経営者はこぞって雇用調整という
名の人員削減策,つまりリストラを断行します。

 こうした「人減らし」は景気の動向に合わせて繰り返し行われてきたた
め,日本社会では「リストラ」,「人員合理化」,「再就職支援」などといっ
た言葉が最近では普通名詞として語られる傾向があり,決して好ましい状
況とはいえません。
経営破綻を目前に全社員を集めて行う集会で,経営者が「断腸の思いで
希望退職を募りますのでご協力ください」というのは自らの経営が失敗し
たことを全社員に告白したことを意味します。
そのため,経営の失敗に対する責任を取ることが先決で,記者会見場で
の発言「社長としてこの危機を乗り越え,会社を再生することが私のとる
べき責任と考えています」というのは責任逃れの言い訳に過ぎません。
こうした「日本企業の風物詩」ともなった「リストラ」は,企業業績の
好調な時に社員を大量採用する原因をつくるため,業績が悪化した時には
人員削減を行わざるを得なくなるという結果をもたらすのです。
この「原因と結果」の関係を経営者はもちろん,人事部門の採用担当者
はよく噛みしめて採用活動を行うことが重要です。目先の採用人数ばかり
に気をとられて会社の将来的見通しを考えずに行う採用活動は単なる「作
業」です。
この意味で今まで企業の採用がいかに場当たり的なご都合主義で行われ,
経営に行き詰まれば雇用調整と称して人員削減を行うことでご破算にして
きた無責任な行事であることが伺えます。

日本企業では,従来「希望退職」が本人の選択で行われてきましたが,1
991年3月のバブル崩壊以降は企業主導の雇用調整になり,毎年のように
リストラを繰り返すようになっています。
こうした傾向は,企業の経営者と社員の信頼関係の根底を覆すことに
なり,経営サイドの一方的なロイヤリティ(エンゲージメント)を社員
に求める図式は形骸化しています。
企業はこのような経営方針を改め,経営計画と社員のキャリア形成を
両立させ,社員が働きやすいと感じる職場環境を整備することが急務と
いえます。

2022年6月15日配信
株式会社comodo特別顧問・経営コンサルタント 永島 清敬

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