改正職業安定法のポイント解説

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 職業安定法は,終戦後まもなく1947年に制定された歴史のある労働法です。国民の勤労の権利と義務を定めた日本国憲法第27条に基づき職業選択の自由の下に公共職業安定所や職業紹介機関が労働力の需給バランスと適材適所の人員配置を実現することにより職業の安定を図り以て社会経済の発展に寄与することを目的とした法律といえます。立法の精神が人間の基本的人権を保障し労働者保護にあるため江戸時代から見られた労働者供給事業といわれる人身売買を禁止しています。
 一方,今国会で成立した改正法の内容は近年スマホの普及に伴いネット求人が当たり前のように行われている中で,募集内容と就業後の労働条件が違うことによるトラブルが多発していることを憂慮した行政が考えた規制の強化策といえます。昨年6月に実施した厚生労働省の調査でわかったことは,トラブルにあったと回答した3人に2人(約66.8%)に上るということです。求職者が「SE未経験者でも月額30万円」とか「年4回の昇給」, 「社会保険完備」などという記事につられて入社したところ,入社後
 2か月間は無給,昇給制度なし,社会保険未加入などの実態があった ことが明るみに出ました。このように求人企業の募集要項に明白な虚偽があり,求人企業から委託を受けた(というより,求人企業からの掲載料収入を財源とするビジネスモデルの)求人メディア運営企業が,求人企業の募集内容を
そのまま掲載していたことが判明しました。これらのメディアは「求人ボックス」を運営するカカクコムやインディードなど求人情報を取り扱う企業ですが,実際とは大きく異なる労働条件で労働者を募り,入社後も試用期間と称してまともに給与を払わないという「ブラック企業」の求人記事をそのままメディアに載せて収益を上げていたということです。こうした求人メディア企業の倫理観のなさは,まさに求職者の企業に対する信頼を大きく失墜させ不信感をもたらすものです。
 これらの実態を受けて,改正法の条項では求人メディア運営会社に対して以下の条項で規制をかけることになりました。すなわち,第5条の四で求人情報の的確な表示を義務づけました。
「虚偽の表示または誤解を生じさせる表示をしてはならない」,「正確かつ最新の内容に保たなければならない」,同法第43条の二は,厚労相に対する事業者名や住所の届出義務」,同法第43条の三は「労働者からの報酬受領の禁止」,同法第43条の四に「命令違反の場合の事業停止」,同法第43条の七に「情報の不的確さに関する苦情処理の義務化」等が新たに規定されました。
 スマホ1つで手軽にアクセスし好条件にだまされる若年者の弱みにつけ込んだ悪質なビジネスといえます。改正職安法ではこうした悪質な求人企業だけでなく,虚偽情報を流した求人メディアの運営会社に対しても業務改善命令や立ち入り検査等の行政処分を行うことが規定化されました。
株式会社comodo
特別顧問 永島清敬

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