企業のガバナンスと5分未満の残業切り捨てについて

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 2 000年以降,日本企業の不祥事が後を絶ちません。食品会社が停電により汚染した原料を使って食中毒事件を起こしたり,顧客の食べ残しを次の顧客の料理に盛り付けたりして問題になったことを記憶している読者も少なくないと思います。

 1960年代日本の高度経済成長がさまざまな公害を引き起こし,経済性だけを追求した企業が社会からバッシングを受け,会社は経営者だけのものではなく,顧客,従業員,地域社会,株主といったステークホルダー(利害関係者)に対して責任を持つべきという議論が沸き上がりました。
 これは,企業が業績を上げさえすればよいと考えられた時代から社会や環境といった広範な価値を追求することで,初めて事業の継続性が約束される時代に変わったことを意味します。
 つまり,21世紀において企業価値を高める行動は,利益を最大化するという株主に対する責任だけでなく,顧客に対して高品質の製品やサービスを提供し,従業員や取引先に対して適正な対価を支払い,地域社会に必要な存在として雇用の受け皿や社会福祉活動などを行う社会的役割を担う必要があることを指すのです。
 最近の事例を取り上げると,従来からの慣行で労働時間の算定を5分単位で行っている企業があります。終業時刻が16時とすると16時5分までは残業代を申請できないという決まりです。また,18時24分の場合は18時20分に切り捨てて計算するというもので,就業規則には載せず,社内の「内規」として運用している会社が多いと聞きます。
 これは労働基準法違反,つまり違法です。会社側の論理として少しでも人件費を削減しようとする措置なのです。
 このような内規を止めて遵法主義に切り替えた企業があります。すかいらーくホールディングス(「ガスト」,「バーミアン」など全国で3100店舗を有するファミリーレストランの事業会社)は本年7月1日からパートタイマーやアルバイトに支払ってきた賃金を5分単位から1分単位に変更することを表明しました。このことに伴い,これまで切り捨ててきた5分未満の労働時間に相当する賃金を過去2年分支払うことを対象従業員に通知しました。対象者は9万人,費用は約16億円になるといいます。
 きっかけは同社の都内の店舗でアルバイトとして働く従業員(26才)が加盟した合同労組「全国一般東京東部労組」がカットされてきた賃金の支払いを会社側に要求したことでした。
 このように外部から違法性を突きつけられて初めて違法性に気づき,不払い賃金を支払うという構図は経営者の倫理観や会社のコンプライアンス意識が欠如した結果によるものと言わざるを得ません。経営者は会社を営利性だけでなく社会性を考えた経営を行うことによって初めて社会に必要な持続可能な存在として認められるのです。
 2005年2月8日当時ライブドアの堀江貴文社長がネットを使った時間外取引を行い,ニッポン放送株を35%買い占め経営権を奪おうとした事件を記憶されている読者もいるかと思います。当時の証券取引法にも想定外のこの取引を違法とする根拠はなく取引は成立したものの,世間からは「儲かりさえすれば何をやってもかまわないのか」という批判を浴びました。
 この事件以降証券取引法は金融商品取引法に改正され時間外取引はできなくなりましたが,その時の教訓として社会に浸透したことは「人が社会生活を送る際には法令だけでなく最低限の社会のルールを守ることが重要」というコンプライアンス理論でした。

 あれから17年が経過し,最近の日本では社会のルールを守る風潮が薄れてきたように思えます。
 「歩行者は右側通行」,「路上喫煙の禁止」,「たばこのポイ捨て禁止」,「エレベーターや電話の乗り降りは下りる方優先」,「きちんと整列する」など私たち日本人の間に代々受け継がれてきた良い社会的習慣は時代が変わっても引き継いでいきたいと思うのは筆者だけでしょうか。

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特別顧問 永島清敬

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