逆設定法は、一般的な常識や固定観念を意図的に逆転させることで、新しい視点を見出す発想法です。
米国のコンサルタント、ステファン・グロスマンによって提唱され、問題解決や新製品開発、ビジネス戦略の策定に活用される手法として知られています。
一般的な思考の枠組みにとらわれると、斬新なアイデアは生まれにくくなります。
しかし、逆設定法では「これまで正しいとされていた常識」を疑い、あえて反対の発想をすることで、新たな視点を獲得できます。
本記事では、逆設定法の基本プロセスやビジョンへの活用方法について解説します。
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逆設定法の基本プロセス

逆設定法の基本的なプロセスは、以下の流れで進みます。
- 先入観や固定観念を明確にする
- 逆のアイデアを意図的に設定する
- 問題点とその解決策を検討する
- 実現可能な形に落とし込む
それぞれの具体的な考え方について見ていきましょう。
1.先入観や固定観念を明確にする
最初に、対象となる分野における一般的な常識や固定観念を洗い出します。
これらの常識がビジネスや製品開発においてどのような影響を及ぼしているのかを分析することが重要です。
例えば、家電業界では「多機能な製品が求められる」という考えが広く信じられています。
しかし、実際にはユーザーがすべての機能を使いこなしているわけではなく、むしろシンプルな操作性を求める声も多いのが実情です。
こうした固定観念を明らかにすることで、次のステップで逆のアイデアを発想しやすくなります。
2.逆のアイデアを意図的に設定する
リストアップした常識をすべて逆転させて考えます。
例えば、「多機能が求められる」という考えに対して、「単機能の家電はどうだろう?」といった発想を試みます。
さらに、単なる逆転にとどまらず、それをどのように実現できるかを具体的に考えることが重要です。
例えば「家電のボタンを極端に減らすことで操作性が向上するのか」「音声やジェスチャー操作を取り入れることでユーザビリティが向上するのか」といった視点を持つことで、現実的なアイデアへと昇華させられます。
3.問題点とその解決策を検討する
逆のアイデアを出した後、それが現実的に機能するかどうかを分析します。
例えば、「ボタンを極端に減らすと操作が困難になる」という問題が発生する可能性があります。
これに対して、音声操作やジェスチャー操作を導入することで、利便性を維持しながら新しい価値を提供できるかもしれません。
同様に、「多機能をなくすとユーザーの選択肢が減る」という課題に対しては、必要な機能だけをカスタマイズできる設計にすることで、解決策を見出せます。
このように、逆のアイデアが引き起こす問題点を解決する方法を考えることで、革新的なコンセプトを生み出せます。
4.実現可能な形に落とし込む
最後に、逆設定したアイデアを実際に活用できる形に落とし込みます。
例えば、「マニュアル不要な家電」を目指す場合、直感的なインターフェースを設計し、AIを活用してユーザーの使用パターンを学習することで、従来のマニュアルを必要としない製品が実現可能となります。
このように、単なる逆転ではなく、それを実際に導入できる形に落とし込むことが重要です。
逆設定法を活用したビジョンの策定方法

逆設定法は、ビジョンの策定においても、斬新なアイデアを生み出す気づきを与えてくれる考え方です。
逆設定法のプロセスをビジョンの策定にあてはめて見ていきましょう。
既存のビジョンの常識を見直す
ビジョンを策定する際、多くの企業は従来の成功パターンに基づいて方向性を決めがちです。
しかし、逆設定法を活用することで、新しい視点からビジョンを見直すことができます。
例えば、「成長市場を狙うべき」「競争力を高めるには価格競争が不可欠」「顧客ニーズに合わせることが最優先」といった固定観念をまず明確にします。
逆のビジョンを考える
次に、それらを逆転させて考えます。
「縮小市場で成功する方法を探る」「価格競争をせずに付加価値で勝負する」「顧客ニーズを無視して、自社が本当に提供したいものを追求する」といった視点を持つことで、従来とは異なるビジョンの可能性が見えてきます。
逆設定したビジョンの問題点と解決策を検討する
逆のビジョンをそのまま採用するのではなく、実際に機能するかどうかを分析し、問題点を洗い出します。
例えば、「縮小市場で成功する」場合、競争が少ない市場で独自の価値を確立することや、高価格帯のニッチ市場を開拓することが求められるかもしれません。
こうした視点から、実現可能な戦略を立てます。
新たなビジョンとして確立する
最後に、逆設定によって得られた新しい方向性を、企業のビジョンとして確立します。
例えば、「量より質」を重視し、少数精鋭のビジネスモデルを構築する、「新市場開拓」ではなく、既存市場での革新を追求するといった形で、逆設定法を活用してビジョンを策定します。
あえて逆をいき、新しいアイデアを創出する

逆設定法は、常識や固定観念を逆転させ、新たなアイデアを生み出す強力なフレームワークです。
特に、企業のビジョン策定においては、従来の枠組みを超えた新しい視点を提供し、革新的な方向性を導く手助けをします。
事業戦略や製品開発だけでなく、組織文化やマーケティングにも応用できるため、企業の成長に大きく貢献する手法となるでしょう。
弊社では、ビジョンを見直す「ビジョン・ブラッシュアップ」研修を行っています。
これまでのビジョンで行き詰っている場合は、今回紹介した逆設定法も試しながら、弊社の研修の活用もご検討ください。

株式会社comodo
石垣敦章(イシガキ ノブタカ)