モデル賃金とは、標準者がたどる賃金基準線のことであり、標準的に昇進、昇格していった場合にたどる賃金のことです。モデル賃金には大まかに分けて3つの種類があります。
理論モデル
標準的に昇進していった人がどのような、賃金になるかをとらえたものです。したがってこれは賃金の統計ではなく、あくまでも賃金表に基づいた制度としてのモデル賃金です。この理論モデルは他のモデル賃金と比較し、最も純粋であり、賃率としての意義を持ち、水準も高いものになります。
実在者モデル
実在者モデルは理論モデルと異なり賃金表を活用していません。その名の通り、企業内に実在する従業員の賃金をモデルにします。例えば、30歳、主任勤続12年、不要家族3人、東京在住といったように企業内の実在者の賃金をつづったものが、実在者モデルになります。これは、実在者の中から標準的な人を取り出し、その賃金をとらえたものであるため、最も現実にそくした点では優れています。ただし、条件に合致した標準者を客観的に選び出せているかどうかは疑問が残ります。昇進においても、昇格においても、当然査定が行われているため、はたして、標準的に昇給した人の賃金を確実にとらえることができているかどうかが問題になります。
実在者モデルは、決して制度的なものではなく、統計的に示したものでもないため、中途半端になり、いわば理論モデルの代用品としての性格を持ちます。
実在者賃金
実在者賃金は、標準的に入社したものすべてを対象とします。そして該当者の平均値、または並数値、または中位数値をとります。数学的代表値を求めつづったものが実在者賃金です。これは現実の賃金の統計としての意味を持ちます。実在者を標準的なものとして1人だけ選ぶわけではないため、選択上の判断や不安定性は入り込みません。あくまで該当する人たちの平均または並数または中位数をとるからです。理論モデルが制度的なものであったのに対し、これはまったく現実の賃金の高さをとらえた統計数字としての意味を持ちます。
実在者賃金の場合には、数学的な代表値のとらえ方として、平均、並数、中位数のおおむね3通りがあります。並数とは該当する人の最も多い賃金であり、中位数とは、ちょうど真ん中に位する人の賃金のことをいいます。数学的には、相場というものは平均ではなく、並数なので、本来は実在者賃金は並数値をとるのが望ましいです。ところが、並数値や中位数は計算がやや難しく、また該当する人数が少ないときには計算ができなく、意味も持たない。そこで一般的には平均値がとられます。平均値をとるときは、必ず最低、最高を併せ表示するように留意すべきです。
また実在者賃金をとる際は、月収モデルと年収モデルの2本を用意することが望ましいです。
3つのモデル賃金の使い方
まず理論モデルは制度としての賃金表を踏まえたものなので、企業の公式的な賃率を示します。賃率とは、その企業における労働力の公定価格のようなものです。賃金表を線として表示し直したものが理論モデルにほかなりません。賃金交渉、とくにベアは労働力の価格改定であり、つまり賃金表の書き換えとしての意義を持ちます。したがって理論モデルは賃金交渉に利用されるべきものといえます。
半面、理論モデルは必ずしも現実の賃金の実態を示すものではないため、賃金の高さの分析とか比較に使うわけにはいきません。賃金の現実の高さをとらえたり分析したり比較するには理論モデルではなく、むしろ実在者賃金が最も適しています。
実在者モデルは、個別賃金と個人別賃金との中間的なものなので、賃金交渉や賃金の高さの分析に便利ではありますが、その性格はあいまであり、理論モデルや実在者賃金に比べると中間的な存在にしかすぎません。
以上のように、理論モデルは賃金交渉に、実在者賃金は賃金の高さの分析に使い分けることができ、さらに参考として実在者モデルをあわせ使うといったあり方が、モデル賃金の正しい使い道といえます。
※参考文献 労使のための賃金入門 賃金テキスト 楠田 丘 経営書院
一方でモデル賃金の考え方は職能資格制度の発想です。
そのため現在ではあまり使われていません。
役割等級制度では、経営計画達成のための役割に応じて賃金を確定します。
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