限られた時間や情報の中で最善の結論を導き出すためには、「仮説思考」を活用することが効果的です。
仮説思考は、問題解決や意思決定の場面で、現時点で入手可能な情報をもとに仮の答え(仮説)を立て、それを検証・修正しながら結論を導くための思考プロセスです。
この方法は、特に不確実性が高い状況や情報が不十分な場合に効果を発揮します。
本記事では、仮説思考の基本的な仕組みとその実践方法を解説し、さらにビジョンの策定に応用する方法について詳しく紹介します。
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仮説思考とは?
仮説思考とは、限られた情報をもとに可能性の高い結論を仮定し、その仮説を検証しながら最終的な答えを導き出す思考法です。
この方法では、問題の全体像を把握する前に仮説を設定し、その仮説を基に必要なデータを収集・分析することで、効率的に結論を得られます。
たとえば、企業で売上が低迷している原因を特定する場合、「特定の商品カテゴリーの売上が下がっている」という仮説を立て、その仮説が正しいかをデータで検証します。
このプロセスを繰り返し、最終的な解決策に到達します。
仮説思考の基本プロセス
仮説思考は以下の5つのステップで進められます。
- 状況の把握:問題を整理し、必要な情報を収集する
- 仮説の設定:現時点で考えられる最も有力な原因や解決策を仮定
- 仮説の検証:設定した仮説が正しいかを確認するために、必要なデータを収集・分析
- 仮説に基づく実行:検証された仮説に基づき、解決策を実行
- 仮説の修正:仮説が間違っていた場合、新たな仮説を立てて再検証
このプロセスを繰り返すことで、問題の本質に迫り、適切な解決策を導き出せます。
仮説思考の実践例
仮説思考はさまざまな場面で実践可能ですが、特に以下のようなケースで効果を発揮します。
- トラブルシューティング
- 新規事業の検討
- 業務改善
あらゆる分野で応用可能な思考法なので、上記に含まれないものに対しても仮説思考を試してみてください。
仮説思考でビジョンを策定する方法
仮説思考は、不確実な状況でも具体的かつ実現可能なビジョンを策定するための効果的な手法です。
特に現代のように変化が激しいビジネス環境では、将来の方向性を描くビジョン策定において、仮説を立てながら進める柔軟なアプローチが求められます。
以下では、仮説思考を活用したビジョン策定の具体的な手順を解説します。
1.現状の課題と機会を分析する
最初のステップは、現状の課題と市場環境を分析し、将来的なチャンスや脅威を把握します。
SWOT分析やPEST分析を活用し、内部環境(自社の強みと弱み)と外部環境(市場の機会と脅威)を洗い出します。
たとえば、「競合がデジタルトランスフォーメーションに取り組む一方で、自社の対応が遅れている」という課題が見えてきた場合、これが次の仮説の出発点となります。
この段階での分析は、仮説の妥当性を高める基盤となります。
2.将来の可能性を仮説として立てる
未来の市場動向や自社の可能性について仮説を立てます。
たとえば、「デジタルトランスフォーメーションが進む市場において、自社がAIを活用したサービスを提供すれば競争優位を築ける」という仮説を設定します。
この仮説は、具体的でありながら、現時点で完全な確証がないものでも構いません。
重要なのは、仮説がビジョンの方向性を明確にする役割を果たすことです。
3.仮説を検証する
仮説が妥当であるかを確認するために、データや実例を基に検証を行います。
市場調査や顧客インタビューを実施し、AIを活用したサービスに対する需要や競合他社の動向を分析します。
また、実現に必要なリソース(技術、人材、資金)を評価し、自社の実行可能性を検証します。
たとえば、「AIサービスの需要が急増している」という市場データが得られた場合、その仮説は信頼性が高まります。
一方で、データが仮説に合致しない場合は、仮説を修正する必要があります。
このプロセスを通じて、ビジョンの現実性を高められます。
4.ビジョンを具体的な目標として策定する
検証された仮説に基づき、具体的で測定可能なビジョンを策定します。
たとえば、「2028年までにAIを活用したサービス分野で市場シェアNo.1を目指す」といった形で、達成時期や成功基準を明確にします。
このようにビジョンを具体化することで、組織全体が目標に向けて一貫した行動を取れるようになります。
ここでのポイントは、ビジョンをあいまいな目標ではなく、具体的な方向性として設定することです。
5.ビジョン実現のプロセスを設計する
策定したビジョンを実現するためのロードマップを作成します。
ロードマップには、短期・中期・長期の具体的なアクションプランを含めます。
たとえば、
- 短期的にはAI開発チームの強化
- 中期的にはプロトタイプの市場投入
- 長期的にはグローバル市場への展開を目指す
といった流れを計画します。
さらに、ビジョンの進捗を定期的に評価し、必要に応じて仮説を見直すプロセスを組み込みます。
これにより、変化する市場環境にも柔軟に対応できます。
6.仮説をもとに継続的に修正・改善する
ビジョンは一度策定したら終わりではなく、環境変化や新たな情報に基づき、定期的に見直します。
たとえば、仮説が環境変化によって無効になった場合、新しい仮説を設定し、それを基にビジョンを修正します。
この継続的なプロセスにより、ビジョンを時代に適応したものに保てます。
仮説思考を活用することで、柔軟かつ適応力のあるビジョン策定が可能になります。
仮説思考で描く未来志向のビジョン
仮説思考を活用したビジョン策定は、不確実性が高い状況でも具体的かつ実行可能な目標を設定するための効果的な方法です。
現状分析から仮説の設定、検証、ビジョンの具体化、ロードマップ作成、修正プロセスまでの流れを通じて、柔軟で信頼性の高いビジョンを構築できます。
この手法は、変化の激しい現代のビジネス環境において、競争優位を確立し、持続的成長を実現するための重要なアプローチとなるでしょう。
このように、ビジョンを策定する際は、単に想いを反映させるようなものではなく、事業に合ったものを考える必要があります。
弊社では、ビジョン・ブラッシュアップ研修をおこなっていますので、ぜひビジョンを策定する際にご相談ください。
株式会社comodo
石垣敦章(イシガキ ノブタカ)