論理的思考を身につける「フェルミ推定」とは?ビジョンの策定にも活きる

フェルミ推定

調査やデータ収集が難しい状況でも、論理的かつ簡易的に数値を導き出す手法が「フェルミ推定」です。

この手法は、情報が限られている場合でも、自前の知識や仮定をもとに数値を推定することで、問題の全体像を把握し、判断材料を得るために活用されます。

フェルミ推定は、物理学者エンリコ・フェルミに由来し、特に短時間での意思決定や計画立案に役立つ実践的な思考法です。

本記事では、フェルミ推定の基本的な仕組みと活用法を解説し、さらにビジョンの策定に応用する方法について紹介します。

【関連するフレームワーク】
ロジックツリーとは何か?ビジョンと合わせた活用方法
仮説思考の実践方法とビジョン策定の方法
目次

フェルミ推定とは?

フェルミ推定とは?

フェルミ推定は、現実のデータが得られない場合に、仮定を設定して数値を導き出す思考法です。

たとえば、「日本全国のピザの年間消費枚数はいくつか?」といった質問に対し、全国の人口や1人あたりのピザ消費量を仮定することで、おおよその答えを算出する方法がこれに当たります。

この思考法は、以下の理由で特に効果的です。

  • 情報が不足している状況でも迅速に判断を下せる
  • 問題を分解し、論理的に考える訓練になる
  • 不確実性の高い状況での計画や意思決定に役立つ

フェルミ推定の基本プロセス

フェルミ推定の基本プロセス

フェルミ推定は、以下の4つのステップで進められます。

  1. 現在得られている情報を整理する
  2. 一般常識や周知の事実を思い出す
  3. 情報をもとに数値を推定する
  4. 推定した数値を使って結論を導き出す

それぞれの具体的な考え方について、以下で解説します。

1.現在得られている情報を整理する

フェルミ推定の第一歩は、現時点で入手可能な情報を整理し、問題を解決するために必要な前提条件を明確にすることです。

具体的には、問題の全体像を把握し、仮定を設定するための基礎となるデータを集めます。

この段階では、正確な数値を求める必要はありません。

たとえば、「日本の納税額を推定する」という課題において、人口規模や納税者の割合、過去の税収額といった基本的な情報を洗い出します。

この情報整理は、後続の仮説設定や計算の精度を大きく左右するため、可能な限り幅広い視点でおこないます。

情報が不足している場合でも、関連する事実や一般常識を参照し、論理的に補完することで準備を整えられます。

2.一般常識や周知の事実を思い出す

次のステップでは、基本的な一般常識や過去の経験をもとに、仮定を立てるための土台を作ります。

たとえば、人口、経済、産業など、広く知られている事実や大まかな数値を活用します。

フェルミ推定の強みは、完璧なデータがなくても思考を進められる点にあるため、一般的な知識を最大限活用します。

例として、「日本の人口は約1億3000万人」「日本の納税者は人口の80%程度」といった概算情報を用いることで、仮説を具体化する準備が整います。

このプロセスでは、仮定を設ける際に精密さよりも現実的な妥当性を重視し、思考を前に進めることが重要です。

3.情報をもとに数値を推定する

収集した情報や設定した仮定をもとに、必要な計算をおこない具体的な数値を推定します。

この段階では、問題を小さな要素に分解し、それぞれに対して推定をおこなうことで、最終的な数値を得ます。

たとえば、「納税額を推定する」場合、まず「納税者数=日本の人口の80%」を計算し、それに「1人あたりの平均納税額」を掛け合わせることで総額を算出します。

このように、複雑な問題をいくつかのシンプルな要素に分け、それらを積み上げる形で答えを導き出します。

フェルミ推定では、1つの仮定が他の仮定に基づいている場合でも、計算を進めることで、最終的な結論に近づけられます。

4.推定した数値を使って結論を導き出す

最後のステップでは、導き出した数値をもとに結論をまとめ、意思決定や次のアクションにつなげます。

この段階では、得られた推定値を現実と照らし合わせ、その妥当性を検討することも含まれます。

たとえば、「日本全国の納税額は約100兆円」という結果が得られた場合、それが現実的かどうかを確認し、必要に応じて仮定や計算方法を見直します。

また、この結論は、次の意思決定やさらなる調査の指針として役立ちます。

フェルミ推定の目的は、あくまで合理的な推定値を迅速に得ることであり、これを出発点として具体的な行動に移すことが重要です。

このプロセスを繰り返すことで、複雑な問題に対する理解を深められます。

フェルミ推定を使ったビジョンの策定方法

フェルミ推定を使ったビジョンの策定方法

フェルミ推定は、不確実性の高い未来を見据えたビジョンを描く際にも効果的です。

以下に、フェルミ推定を活用したビジョン策定の具体的な手順を解説します。

1.現状の課題を洗い出す

まず、現在の事業環境や課題を整理します。

たとえば、「5年後にAI市場で競争力を確立する」というビジョンを立てるために、現在の市場規模や競合の状況を分析します。

2.仮説を立てて未来を想定する

未来の市場動向や技術トレンドを仮定します。

たとえば、「AI市場は年率20%で成長し、5年後には現在の2倍の規模になる」という仮説を立てます。

3.仮説をもとに必要なリソースを推定する

未来の目標を達成するために必要なリソースを推定します。

たとえば、必要な人材数や投資額、開発期間をフェルミ推定で算出し、ビジョン実現に向けた具体的な指針を得ます。

4.数値を基に具体的な目標を設定する

推定した数値を基に、測定可能な目標を設定します。

たとえば、「2028年までにAIサービスの売上を現在の3倍にする」といった形で具体的な目標を立てます。

5.ビジョン達成のプロセスを設計する

最後に、目標達成に向けたアクションプランを作成します。

短期・中期・長期の計画を作成し、進捗を測定するためのKPIを設定します。

このプロセスを通じて、フェルミ推定を活用した現実的かつ実現可能なビジョンを描けます。

フェルミ推定で未来を描く

フェルミ推定で未来を描く

フェルミ推定は、情報が不足している状況でも論理的に数値を導き出し、迅速な意思決定を可能にする有用な手法です。

市場規模の推定や事業計画の立案、さらにはビジョンの策定においても、その柔軟性と汎用性を活かせるでしょう。

特に、不確実性が高い未来に向けてフェルミ推定を活用することで、現実に基づいた明確な方向性を示すビジョンを構築できます。

このように、ビジョンの策定方法はいくつかのアプローチが可能です。

もし、現在のビジョンが曖昧なものになっているのであれば、フェルミ推定を活用してみてください。

弊社では、ビジョンをブラッシュアップする研修もおこなっていますので、現在のビジョンが機能していなかったり腑に落ちていなかったりする場合に、ぜひご活用ください。

あわせて読みたい
チームのパフォーマンス向上と優秀な人材が集まり辞めない。をつくる。チームを魅了し鼓舞する!ビジョ... 【あなたの想い、メンバーに届いていますか?】 これまでのように期待していた成果が出づらくなってきた・・メンバーとの社内コミュニケーションにカベを感じている・・...

株式会社comodo
石垣敦章(イシガキ ノブタカ)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次