競争の激しい市場において、自社が独自の価値を生み出すためには、業界の固定観念を打破し、新たな市場の可能性を見出さなければなりません。
その際に役立つフレームワークが「6つのパス」です。
この手法は、ブルーオーシャン戦略の一環として提唱されており、市場の境界を再定義し、新たな顧客層や市場機会を探るためのヒントとなります。
本記事では、6つのパスの基本概念と活用方法を解説し、さらにビジョン策定への応用についても詳しく紹介します。
6つのパスとは?
「6つのパス(境界線)」とは、従来の業界の枠組みにとらわれず、新しい市場機会を探るためのフレームワークです。
競争を前提とする市場の境界線を取り払い、新たな価値創出の可能性を見出すために以下の6つの視点を活用します。
- 代替産業に学ぶ
- 業界内のほかの戦略グループから学ぶ
- 買い手グループに目を向ける
- 補完財や補完サービスを見渡す
- 機能志向と感性志向を切り替える
- 将来を見渡す
これらの視点を活用することで、既存市場の競争に巻き込まれず、新たな成長機会を発見することができます。
以下で、6つの具体的な内容や活用例を解説します。
代替産業に学ぶ
自社の業界とは異なるが、顧客にとって代替手段となる製品・サービスから学びます。
例えば、映画館とテーマパーク、飛行機と新幹線、オンライン会議と対面ミーティングなど、異なる業界であっても顧客が選択の際に比較するものがあります。
これらの代替産業のビジネスモデルを研究することで、自社の業界に新たな価値を取り入れることが可能になります。
【活用例】
- 航空会社が鉄道業界の「定額乗り放題」モデルを参考に、新たな価格戦略を開発
- フィットネス業界がオンライン教育プラットフォームを参考に、月額課金型のオンラインレッスンを提供
業界内のほかの戦略グループから学ぶ
同じ業界内でも、異なる競争戦略を持つ企業を分析し、自社に応用できる要素を見つけます。
例えば、自動車業界には高級車メーカーと低価格車メーカーがあり、それぞれの戦略は大きく異なります。
この視点では、異なる戦略グループの成功要因を取り入れることが重要です。
【活用例】
- 高級ホテルがビジネスホテルの効率的な運営モデルを導入し、高級感とコストパフォーマンスを両立
- 高価格帯のブランドがサブスクリプションモデルを取り入れ、定期的に商品を提供する新たなサービスを開始
買い手グループに目を向ける
顧客をより細かく分類し、新たなターゲット層を発見します。
通常のターゲット層とは異なる新しい買い手グループに着目することで、市場の拡大が可能になります。
【活用例】
- 一般消費者向けの商品を企業向けにアレンジし、BtoB市場に展開
- 子供向けの学習アプリを高齢者向けにカスタマイズし、新たな市場を開拓
補完財や補完サービスを見渡す
自社の製品やサービスと一緒に利用される補完的な商品・サービスを見直し、新たな提供価値を生み出します。
例えば、映画館とポップコーン、スマートフォンとアクセサリーなど、補完的な組み合わせに新たなビジネスチャンスがある可能性があります。
【活用例】
- ホテルがレンタカーやツアーサービスと提携し、旅行パッケージを提供
- 家電メーカーが設置・メンテナンスのサービスをセットにしたサブスクリプションを導入
機能志向と感性志向を切り替える
業界の特性に応じて、機能(性能重視)と感性(デザインや体験重視)のバランスを見直します。
例えば、従来は機能を重視していた家電メーカーが、デザインや使いやすさを前面に出すことで新たな顧客層を獲得できる場合があります。
【活用例】
- AV機器メーカーがインテリアに馴染むデザインの製品を開発し、ライフスタイル市場に参入
- ヘルスケア業界が健康管理機能に加えて、ユーザーの心理的満足感を高めるデザインを導入
将来を見渡す
市場の将来予測を行い、今後のトレンドに対応した戦略を立てます。
社会の変化やテクノロジーの進化を考慮し、今後の市場ニーズを見越した商品やサービスを開発することが重要です。
【活用例】
- 自動車業界が自動運転技術の進展を考慮し、新たなビジネスモデルを模索
- 小売業がキャッシュレス決済の普及を見越し、デジタル店舗体験を強化
6つのパスを使ったビジョンの策定方法
6つのパスは、市場の枠組みを見直し、企業が競争を避けながら新たな市場を創出するためのフレームワークです。
このフレームワークを活用すれば、企業のビジョンをより明確にし、長期的な成長戦略を描くことが可能になります。
ここでは、6つのパスを活用してビジョンを策定するための具体的なステップを解説します。
1.現在の市場環境と自社の強みを分析する
ビジョンを策定する前に、現在の市場環境を正しく把握し、自社の強みと競争優位性を明確にします。
ここでは、以下のポイントを整理しておきましょう。
- 市場環境の変化
- 競争状況の確認
- 自社の強みと課題
分析をおこなうことで、6つのパスを活用する際にどの視点が最も有効かを判断しやすくなります。
2.6つのパスの視点で市場機会を洗い出す
6つのパスの視点を使って、新たな市場機会を探ります。
具体的には、以下のような問いを立てながらビジョンの方向性を模索します。
6つのパス | 具体的な問い |
---|---|
代替産業に学ぶ | 他業界の成功モデルを取り入れ、新たな市場を創出できるか? |
業界内のほかの戦略グループから学ぶ | 異なる競争戦略を持つ企業の強みを取り入れ、差別化できるか? |
買い手グループに目を向ける | 現在ターゲットにしていない顧客層を開拓できるか? |
補完財や補完サービスを見渡す | 自社の商品と組み合わせることで新たな価値を提供できるか? |
機能志向と感性志向を切り替える | 商品やサービスの提供価値を機能面と感性面のどちらにシフトするか? |
将来を見渡す | 市場や顧客の変化を見越して、どのような新サービスを開発すべきか? |
なお、ここでは複数のアイデアを出し、将来的な成長の可能性を幅広く検討します。
3.市場の将来を予測し、ビジョンの方向性を決定する
市場の未来を見据え、どのようなビジョンを掲げるべきかを決定します。ここでは、以下の視点を考慮します。
- 市場の成長性
- 顧客ニーズの変化
- 技術の進化
ここでは、具体的な数値目標は設定せずに、大枠のビジョンを決定することがポイントです。
4.具体的な目標と戦略を設定する
ビジョンの方向性が決まったら、それを実現するための具体的な目標と戦略を策定します。
- 目標設定
- 実行戦略の設計
このステップでは、ビジョンを実現するためのロードマップを作成し、どのように進めるかを明確にします。
5.ビジョンを継続的に検証し、適応する
ビジョンは一度策定したら終わりではなく、定期的に見直しを行い、必要に応じて調整しましょう。
市場環境は常に変化するため、柔軟に対応できるようにする必要があります。
- KPIのモニタリング
- 市場環境の変化に応じた見直し
ビジョンの柔軟性を保ちながら適応していくことが大切です。
ビジョン策定のヒントに6つのパスを活用
6つのパスを活用することで、新たな成長機会を見出せます。
ビジョンの策定においても、これらの視点を取り入れることで、より実現可能な市場に適応した戦略を立てられます。
弊社でも、ビジョンのブラッシュアップ研修をおこなっていますので、現状のビジョンでは成長に繋がらないと感じる場合は、ぜひご相談ください。
株式会社comodo
石垣敦章(イシガキ ノブタカ)