創造的なアイデアを生み出すことは、ビジネスの成長や問題解決において重要な要素です。
しかし、ただ闇雲に考えても優れたアイデアはなかなか出てきません。
そこで活用できるのが、「ワラスの4段階」です。
ワラスの4段階は、心理学者グラハム・ワラスによって提唱された思考プロセスのモデルであり、創造的な発想を体系的に生み出すための手法として知られています。
このプロセスを活用することで、効果的にアイデアを発想し、具体化することが可能になります。
本記事では、ワラスの4段階の基本的な仕組みと活用方法を解説し、さらにビジョンの策定に応用する方法について詳しく紹介します。
【関連するフレームワーク】 ・オズボーンのチェックリストとは?創造的なアイデアを生み出す9つの視点 ・KJ法とは?アイデアを整理し論理的に構造化する手法 |
ワラスの4段階とは?

ワラスの4段階は、創造的なアイデアが生まれるまでの思考の流れを、以下の4つのステップに分けたものです。
- 準備段階(情報収集と問題分析)
- 孵化段階(無意識下での思考整理)
- アイデアの誕生と保護(ひらめき・啓示)
- 具体化と検証(アイデアの実用性評価)
これらのステップを意識的に行うことで、創造的な発想を促進し、実用的なアイデアへと昇華することができます。
1.準備段階
アイデアを生み出すための準備として、情報を収集し、問題を分析する段階です。
創造的な発想には、まず十分な知識やデータが必要です。
何も知らない状態で斬新なアイデアを考えることは難しく、まずは思考のための「材料」を集めることが重要です。
例えば、新しいマーケティング戦略を考える場合、以下のような情報を集めます。
- 競合他社のマーケティング手法
- 過去の成功事例と失敗事例
- 市場トレンドや顧客ニーズ
この段階では、まだ具体的なアイデアを生み出すことを意識する必要はありません。
「どんな要素があるのか?」をリサーチし、整理することに集中しましょう。
2.孵化段階
孵化段階では、準備段階で得た情報を脳内で整理するプロセスです。
一度情報を頭の中に蓄積し、そのまま意識的な思考を止めることで、無意識のうちにアイデアが練られていきます。
この段階で重要なのは、「あえて考えない」ことです。
意識的に考えすぎると、既存の枠組みにとらわれ、新しい発想が生まれにくくなります。
効果的な方法として、以下のようなアプローチがあります。
- アイデアを寝かせる(しばらく考えない時間を作る)
- 散歩や運動をする(脳に新しい刺激を与える)
- 全く関係のない作業をする(リラックスした状態を作る)
例えば、新しいプロダクトのアイデアを考えている場合、一旦デスクを離れて散歩をすることで、ふとした瞬間にアイデアが浮かぶことがあります。
3.アイデアの誕生と保護
孵化段階を経ると、突然「ひらめき」が訪れる瞬間があります。
この段階では、新しいアイデアが浮かびやすくなり、それを記録し、発展させることが重要です。
アイデアが出たら、まずは否定せずに全て書き留めます。
また、アイデアが生まれても、それをすぐに「実行可能かどうか」で判断しないようにしましょう。
最初から現実的な制約を考えてしまうと、創造的な発想が制限されてしまいます。
4.具体化と検証
最後のステップでは、誕生したアイデアを整理し、実際に実行可能なものへと落とし込んでいきます。
この段階で意識すべきことは、
- アイデアを組み合わせて発展させる
- 具体的なアクションプランを作る
- 実現可能性を検証する
例えば、ひらめいたマーケティング施策が「SNSを活用したインフルエンサーマーケティング」だった場合、具体的にどのプラットフォームを活用し、どのターゲット層に訴求するのかを明確にします。
また、一度アイデアを形にした後、第三者の意見を聞いてブラッシュアップすることも重要です。
ワラスの4段階を活用したビジョンの策定方法

ワラスの4段階は、単なるアイデア創出の手法にとどまらず、企業や組織のビジョンを策定するプロセスとしても活用できます。
ビジョンは、企業の将来の方向性を示す重要な指針ですが、漠然とした理想論だけでは現実的な戦略に落とし込むことができません。
そこで、ワラスの4段階を適用することで、論理的かつ創造的にビジョンを構築できます。
1.ビジョンの基盤となる情報を収集する(準備段階)
ビジョンを策定するためには、まず現状の理解が不可欠です。
この段階では、企業の現状、業界のトレンド、競合の動向、社会的な課題などを調査し、未来の方向性を考えるための材料を集めます。
具体的には、以下のような情報を整理することが重要です。
- 内部分析:企業の強み・弱み、成功した事業・失敗した事業、過去の成長要因
- 外部分析:市場の成長予測、競合企業のビジョン、消費者のニーズの変化
- 社会的要因:SDGsやDX(デジタルトランスフォーメーション)など、時代の流れ
情報を集める際には、SWOT分析やPEST分析を活用し、ビジョンを考える際の「前提条件」を整理することがポイントです。
この準備が不十分だと、ビジョンが現実とかけ離れたものになってしまうため、徹底したリサーチが求められます。
2.情報を整理し、潜在的な方向性を考える(孵化段階)
準備段階で得た情報をすぐにビジョンにまとめるのではなく、一定期間寝かせることで、新たな視点を生み出すことができます。
この段階は、意識的に考えるのではなく、無意識の中でアイデアを熟成させるプロセスです。
効果的なアプローチとして、以下のような手法が有効です。
- ディスカッション:社内外の関係者と意見交換を行い、多様な視点を取り入れる
- ブレインストーミング:アイデアを広げるための自由な発想を促す
- リフレクション(内省):現状の課題と向き合い、何が本当に必要かを再考する
このプロセスを通じて、ビジョンの核となる要素を見極めることができます。
また、孵化段階では無理に結論を出すのではなく、あえて情報を寝かせることで、時間の経過とともに新しいアイデアが浮かび上がることがあります。
3.未来のビジョンを自由に発想する(アイデアの誕生と保護)
孵化段階を経た後、具体的なビジョンのアイデアを生み出すプロセスに入ります。
ここでは、「自由な発想」を重視し、制約を設けずにアイデアを出すことが大切です。
例えば、以下のような問いを投げかけながら、ビジョンの方向性を模索します。
- 企業の存在意義(パーパス)は何か?
- 5年後、10年後にどんな企業になりたいか?
- 社会にどのような価値を提供するのか?
- 従業員や顧客にとって、どんな未来を築くのか?
この段階では、「実現可能性」にとらわれず、ビジョンの理想形を追求することが重要です。
アイデアを出す際には、オズボーンのチェックリストなどを活用して視点を広げるのも効果的です。
また、発想したアイデアはすぐに評価せず、メモや付箋に書き留めておくことが大切です。
一見突飛に見えるアイデアでも、後から振り返ると有用なものが含まれていることが多いため、すべてのアイデアを記録しておきましょう。
4.ビジョンを具体化し、実現可能な形に落とし込む(具体化と検証)
最後のステップでは、誕生したビジョンを現実的なものへと具体化していきます。
単なる理想論ではなく、企業の実情に合った実行可能なビジョンへと落とし込むことが重要です。
このプロセスでは、以下の3つのポイントを意識すると、より具体性のあるビジョンを策定できます。
- 明確な目標を設定する
- アクションプランを作成する
- 定期的に見直して修正する
ワラスの4段階を活用して実現可能なビジョンを策定しよう

ワラスの4段階は、創造的なアイデアを生み出すプロセスとしてだけでなく、企業のビジョンを策定する際にも活用できるフレームワークです。
情報収集からアイデアの誕生、具体化までのプロセスを体系的に進めることで、より実現性の高いビジョンを描くことが可能になります。
- 準備段階:市場や社内の情報を収集し、分析する
- 孵化段階:情報を寝かせ、思考を整理する
- アイデアの誕生と保護:自由な発想でビジョンの可能性を探る
- 具体化と検証:現実的な目標と戦略を策定し、実行プランを立てる
このプロセスを活用することで、企業はより確固たるビジョンを持ち、それを実現するための具体的な道筋を描くことができるでしょう。
ただし、それでもビジョンの策定が難しい場合は外部業者への依頼も検討してみてください。
弊社では「ビジョン・ブラッシュアップ」研修をおこなっています。
より実現性の高い響くビジョンを策定するために、ご活用ください。

株式会社comodo
石垣敦章(イシガキ ノブタカ)