ビジネス課題を整理する「インフルエンス・ダイアグラム」

「意思決定の材料が多すぎて、何を基準に考えるべきかわからない」
「関係者の意見がバラバラで、議論が前に進まない」

こうした悩みを抱えるビジネスの現場で、状況を整理し、判断の筋道を明確にしてくれるのが「インフルエンス・ダイアグラム(影響関係図)」という思考ツールです。

特に複数の要素が複雑に絡み合う経営判断や戦略設計、プロジェクトの検討段階などで強力な支援ツールになります。

この記事では、インフルエンス・ダイアグラムの基本的な使い方から、ビジョン策定への応用方法までを解説していきます。

目次

インフルエンス・ダイアグラムとは?

インフルエンス・ダイアグラムとは?

インフルエンス・ダイアグラム(Influence Diagram)は、ある意思決定に関係するさまざまな要素を「ノード」として配置し、それぞれがどのように影響し合うかを矢印で表した図です。

もともとは定量的な分析ツールとして発展してきた考え方ですが、ビジネスにおいては「意思決定の構造を視覚的に整理する」ための思考法として活用されています。

特に有効なのは以下のようなケースです。

  • 新事業に投資すべきかどうかの判断
  • 施策の優先順位づけ
  • 複数の変数が絡む市場戦略の検討
  • プロジェクトにおけるリスク評価
  • チーム間の合意形成や議論の土台づくり

複雑な状況のなかで「何を軸に考えるべきか」がわかることで、判断がスムーズになり、関係者との認識共有も進みます。

インフルエンス・ダイアグラムの構成要素

インフルエンス・ダイアグラムの構成要素

ビジネスの状況を整理するとき、多くの人は「ToDoリスト」や「フロー図」を使います。

しかし、それだけでは要素同士の因果関係や、判断の影響の広がりを捉えることができません。

インフルエンス・ダイアグラムは、ゴール(価値)と複数の選択肢や不確定要素のつながりを一つの図で表す思考ツールです。

意思決定ノード・不確定ノード・価値ノードの3分類

インフルエンス・ダイアグラムは、関係要素を「ノード(点)」として整理し、それらを矢印でつなぐことで影響の流れを視覚化します。

ノードには3種類があります。

  • 意思決定ノード:自社が主体的に選べる選択肢。投資、価格設定、マーケティング戦略などが該当します。
  • 不確定ノード:外部環境など、自社の意思では動かせないが影響を与える要素。市場規模、法改正、競合動向など。
  • 価値ノード:最終的な評価軸やゴール。利益、成長率、顧客満足度、社会的価値などを指します。

この分類を使うことで、「何が決定可能で」「何が不確実で」「何を目指しているのか」が明確になります。

因果関係を矢印でつなぐことで、判断材料の全体像が見える

ノード間の関係性は矢印(インフルエンス)で表現します。

「Aが変わればBに影響を及ぼす」という因果の連鎖を視覚的に捉えることができるため、どの要素が判断に重要か、どこがボトルネックになっているかを直感的に把握できます。

たとえば、利益という価値ノードに対して、

  • 「設備投資→生産量→販売量→利益」
  • 「市場規模→販売量」

というように、複数の経路で影響が流れ込んでいることがわかります。

これにより、意思決定者は「何を優先して判断すべきか」が明確になります。

インフルエンス・ダイアグラムの活用方法

インフルエンス・ダイアグラムの活用方法

インフルエンス・ダイアグラムは、定量的な分析よりも、「全体を見渡して構造を捉える」ことに長けたツールです。

実際のビジネスの現場では、以下のような場面で活用されています。

複雑な意思決定を構造的に整理できる

意思決定において、関連する情報や要素が多すぎると、何を基準に判断すべきかが不明確になります。

特に経営層やプロジェクトリーダーにとっては、部分的な情報よりも「全体の構造」が重要です。

インフルエンス・ダイアグラムを使えば、単なる要素の羅列ではなく、それぞれがどう関係し合っているのかを“図”として捉えることができます。

そのため、「今、何に注目すべきか」「この判断がどこに波及するのか」を俯瞰的に捉えることができ、納得感のある意思決定につながります。

チーム内の共通理解・議論の土台をつくる

複数の関係者が関わる場面では、判断基準や優先順位が人によって異なることが多く、話し合いが平行線になりがちです。

そんなとき、インフルエンス・ダイアグラムを用いることで、「判断構造の見える化」が可能になります。

たとえば、「利益が出ない原因は価格なのか?販促不足なのか?設備老朽化なのか?」といった議論も、ノードで関係性を可視化することで、認識を揃えやすくなります。

全員が同じ図を見ながら話すことで、抽象論ではなく「構造的な会話」が生まれます。

リスク予測と対応策の検討にも使える

不確定ノードの扱いは、リスク管理においても非常に有効です。

「この意思決定は、市場の変動にどう影響されるか」「法改正が起きたらどのノードが連鎖するか」といった仮説を立てることで、事前に備えることができます。

また、「一見大きな要素に見えても、他の要素にほとんど影響しない」といった判断もできるため、時間やコストのかけどころを明確にするのにも役立ちます。

インフルエンス・ダイアグラムを応用したビジョン策定の考え方

インフルエンス・ダイアグラムを応用したビジョン策定の考え方

ビジョンは企業の未来像を描くものですが、実現可能性が伴っていなければ単なるスローガンになってしまいます。

インフルエンス・ダイアグラムを使えば、「そのビジョンをどうやって実現するのか」を構造的に考えることができるようになります。

ビジョンを「価値ノード」として定義することで、構想が具体化する

まずは、企業が掲げたい未来像を価値ノードに置きます。

「社会に信頼される会社になる」「業界をリードするブランドを築く」など、ビジョンが言葉として定まっている場合も、それをダイアグラム上で“実現目標”として視覚化します。

そのうえで、「このビジョンは何によって達成されるのか?」「どの要素を動かせば近づくのか?」を考えていくことで、単なる理想ではなく道筋のある未来に変わっていきます。

意思決定ノードを通じて「自社が選べるアクション」を洗い出す

ビジョンに向けて行うべき判断・投資・戦略が、意思決定ノードとして浮かび上がります。

たとえば、「人材育成に投資する」「新サービスを開発する」「海外市場に進出する」など、自社が主体的に取り得るアクションを可視化することで、ビジョン実現のための手段が明確になります。

これにより、「ただ掲げるだけのビジョン」ではなく、「実行の選択肢が伴うビジョン」に進化させることができます。

不確定ノードを含めることで現実的なビジョン設計が可能になる

ビジョン策定の際、楽観的に物事を進めてしまうケースは少なくありません。

しかし、社会情勢や業界の流れなど、自社がコントロールできない要素(不確定ノード)をあらかじめ織り込んでおくことで、「変化にも耐えうるビジョン設計」が可能になります。

未来を描くだけでなく、「変動要因にどう対応するか」というシナリオも持っておくことで、ビジョンはより柔軟かつ現実的になります。

構造を描ければ、未来への判断はブレなくなる

構造を描ければ、未来への判断はブレなくなる

インフルエンス・ダイアグラムは、複雑な課題に直面したときの思考の地図となる存在です。

判断すべきポイントを見失わず、ビジョン実現のステップも具体的に落とし込むことができます。

抽象的な理念を掲げるだけでなく、それをどうやって達成するのかを構造的に捉える力こそが、これからのリーダーや経営者に求められるスキルです。

しかし、ビジョンの策定に関しては専門家に依頼することをおすすめします。

ビジョンの策定は、予想以上に時間も手間もかかるうえに、全従業員が納得できるものの策定が難しいからです。

弊社では、ビジョンブラッシュアップ研修をおこない、貴社に合った機能するビジョンを策定します。

ぜひビジョン策定の際には一度ご相談ください。

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株式会社comodo
石垣敦章(イシガキ ノブタカ)

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