企業が独自性を打ち出し、新たな価値を生み出すためには、創造的な思考が必要です。
しかし、
「アイデアが出てこない」
「いつも似たような発想になってしまう」
といった課題を抱える人も多いでしょう。
こうした状況を打破するためのフレームワークが「オズボーンのチェックリスト」です。
オズボーンのチェックリストは、既存の考え方に縛られず、多様な視点からアイデアを生み出すためのツールです。
本記事では、オズボーンのチェックリストの基本概念や活用方法を解説し、さらにビジョン策定に応用する方法についても紹介します。
オズボーンのチェックリストとは?
オズボーンのチェックリストは、ブレインストーミングの生みの親であるアレックス・F・オズボーンによって考案されたフレームワークです。
特定のテーマや問題について、9つの異なる視点から発想を広げることで、新しいアイデアを生み出すのに役立ちます。
このチェックリストは以下の9つの視点から構成されています。
チェックリスト | 視点 | 活用例 |
---|---|---|
転用 | 他に使い道はないか? | ・使い捨てカメラの技術を医療機器に応用し、内視鏡検査用のカメラを開発する。 ・飲食店の廃棄食品を肥料や家畜の飼料に転用する。 |
応用 | 他のアイデアが借りられないか? | ・自動車業界の「カーシェアリング」の仕組みを家電レンタルサービスに応用する。 ・飲食業界の「サブスクリプションモデル」をアパレル業界に導入する。 |
変更 | 変えてみたらどうか? | ・コーヒーショップのメニューに「健康志向」を取り入れ、プロテイン入りコーヒーを販売する。 ・既存のアプリのUIを改良し、操作性を向上させる。 |
拡大 | 大きくしてみたらどうか? | ・スマートフォンの画面サイズを大きくし、タブレットとの中間モデルを開発する。 ・飲食店の料理のボリュームを増やし、シェア向けメニューを提供する。 |
縮小 | 小さくしてみたらどうか? | ・軽量で持ち運び可能な超小型プロジェクターを開発する。 ・1人用の小型カフェスペースを作る。 |
代用 | 他のもので代用できないか? | ・石油由来のプラスチックを環境に優しい生分解性素材に変更する。 ・牛乳を使わず、オーツミルクや豆乳で作るアイスクリームを開発する。 |
置換 | 入れ替えてみたらどうか? | ・料理の提供順を変更し、デザートを最初に出す新しいレストラン体験を提供する。 ・通常のオフィスの配置をフリーアドレス化し、業務の効率化を図る。 |
逆転 | 逆にしてみたらどうか? | ・製品の無料提供から始め、後で課金する「フリーミアム」モデルを導入する。 ・飲食店で「客がシェフに料理を指導できる体験型レストラン」を開発する。 |
結合 | 組み合わせてみたらどうか? | ・コーヒーショップと書店を組み合わせた「ブックカフェ」を展開する。 ・音楽ストリーミングとフィットネスアプリを統合し、運動時に最適な楽曲を提供する。 |
オズボーンのチェックリストを活用したビジョンの策定方法
オズボーンのチェックリストは、アイデア発想のためのツールとして広く活用されていますが、企業の長期的なビジョンを策定する際にも有効です。
新しい市場機会を探したり、事業の方向性を見直したりする際に、既存の枠組みにとらわれない発想を導き出すことができます。
ここでは、オズボーンのチェックリストを活用し、具体的なビジョン策定を行うためのステップを解説します。
1.既存のビジョンをチェックリストに当てはめる
まずは、現在のビジョンがオズボーンのチェックリストのどの視点に当てはまるかを分析し、ビジョンの改善点や新しい方向性を見つけます。
多くの企業がビジョンを掲げていますが、その内容が「現状の延長線上」である場合が少なくありません。
たとえば、「業界のリーダーになる」「持続可能な成長を目指す」といった一般的なビジョンは、競合と差別化ができていない可能性があります。
オズボーンのチェックリストを使って、「転用」「応用」「変更」などの視点から現在のビジョンを見直すことで、新しい価値観を加えられます。
「逆転」の視点を取り入れ、「顧客が販売側に立つプラットフォーム型ビジネスへの転換」といった、これまでとは異なる発想を導くことができます。
2.競合との差別化を考える
多くの企業は、競合と類似したビジョンを掲げがちです。
しかし、競争の激しい市場においては、同じようなビジョンでは顧客の共感を得られず、独自性を打ち出すことが難しくなります。
そこで、オズボーンのチェックリストを活用し、競合との差別化を図ります。
3.未来の市場ニーズを予測する
ビジョンを策定する際には、現在の市場だけでなく、将来のトレンドを見据えることが不可欠です。
しかし、多くの企業は短期的な戦略に重点を置きすぎるあまり、長期的な市場変化に適応できないケースが見られます。
ここで、オズボーンのチェックリストの「拡大」「縮小」「逆転」などの視点を活用すると、新たな市場の可能性を見出せます。
例えば、自動車業界では、従来の「拡大」の視点で電気自動車市場を広げるビジョンを策定していましたが、現在では「縮小」の視点を取り入れ、「軽量化」「都市向け超小型EV」といった新しいコンセプトが生まれています。
また、「逆転」の視点を適用すると、「自動車を所有するのではなく、移動をシェアする」というモビリティサービスの概念が生まれ、Uberやカーシェアのような新たな市場が開拓されました。
このように、未来の市場ニーズを見据えたビジョン策定には、オズボーンのチェックリストが非常に有効です。
4.具体的な目標に落とし込む
ビジョンが明確になったら、それを実現するための具体的な目標を設定します。
ビジョンが抽象的すぎると、従業員や関係者に浸透せず、実行に移せないケースが多いため、実現可能な形に落とし込むことが重要です。
このステップでは、「結合」「変更」「転用」といった視点を活用し、具体的なアクションプランを策定します。
5.ビジョンを継続的に検証し、適応する
ビジョンは一度策定したら終わりではなく、定期的に見直しを行い、必要に応じて適応させることが重要です。
市場環境の変化や新技術の登場、消費者ニーズの変化に対応するために、定期的にオズボーンのチェックリストを使って新たな視点を取り入れましょう。
オズボーンのチェックリストで柔軟なビジョンを策定する
オズボーンのチェックリストを活用すれば、固定観念にとらわれず、新しい発想を生み出しながら企業のビジョンを策定できます。
特に、競争の激しい市場環境では、柔軟な発想と継続的な適応が求められるため、このフレームワークを定期的に活用すると良いでしょう。
それでもビジョンの策定が難しい場合は、弊社の「ビジョン・ブラッシュアップ」研修をご活用ください。
フレームワークも活用しながら、貴社に最適なビジョンを策定します。
株式会社comodo
石垣敦章(イシガキ ノブタカ)