サービスプロフィットチェーンとは?社員満足と顧客満足をつなげて企業利益を伸ばす経営モデル

経営において「社員を大切にすれば、会社は伸びる」という言葉をよく耳にします。

しかし、そこに明確な仕組みや論理がなければ、単なる理想論で終わってしまうことも少なくありません。

この理想を理論として体系化したのが、サービスプロフィットチェーン(Service Profit Chain, SPC)です。

社員満足と顧客満足、そして利益との間に「つながりの連鎖」を描き出し、企業が継続的に成長していくための仕組みを示しています。

本記事では、サービスプロフィットチェーンの仕組みと考え方を解説し、さらにビジョン策定にどう活かせるかまでをわかりやすく紹介します。

バリューイノベーションの中核であるERRCのフレームワークを解説しながら、それを活用したビジョン策定の思考法までを丁寧に紹介します。

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目次

サービスプロフィットチェーンとは?

サービスプロフィットチェーンとは?

サービスプロフィットチェーンとは、一言でいえば「社員満足が高まると顧客満足が高まり、結果として企業利益も伸びる」という仕組みを可視化したモデルです。

1990年代にハーバードビジネススクールの研究で提唱され、サービス業のみならず多くの企業に応用されています。

この考え方のポイントは、「企業の利益は現場の従業員のやる気や働きやすさから始まる」という出発点にあります。

つまり、表面的に利益や売上だけを追いかけるのではなく、まず社内の環境や仕組みを整えることが企業成長の源になるという発想です。

サービスプロフィットチェーンは「外部」と「内部」の2つの循環から成り立つ

サービスプロフィットチェーンは「外部」と「内部」の2つの循環から成り立つ

サービスプロフィットチェーンは、大きく分けて以下の2つのプロセスを持っています。

それぞれのプロセスについて、以下で解説します。

外部サービスのプロフィットチェーン(顧客側)

これは一般的なマーケティングやサービス論でも馴染みのある考え方です。

  1. サービス品質が高まる
  2. 顧客満足度(CS)が高まる
  3. 顧客のロイヤルティ(愛着・継続利用)が高まる
  4. 顧客数や売上が拡大し、企業利益が向上する

良いサービスを提供すれば、顧客は満足し、再利用や紹介が増え、収益が安定するという流れです。

これはあくまで「外部」で起こる循環です。

内部サービスのプロフィットチェーン(社員側)

サービスプロフィットチェーンの肝は、実は「内部」の循環にあります。

  1. 社内の仕事環境や制度が整う
  2. 従業員満足度(ES)が高まる
  3. 従業員のモチベーションや生産性が上がる
  4. 顧客対応の質が上がり、外部サービスの循環へつながる

社員が安心して働ける環境があってこそ、顧客への良いサービス提供が可能になり、そこから収益も上がっていくという流れです。

サービスプロフィットチェーンを活用した経営改善のステップ

サービスプロフィットチェーンを活用した経営改善のステップ

SPCを実際に経営に活かすには、以下のようなプロセスで考えていくと効果的です。

1. 内部サービス品質の現状を把握する

まず、現場の社員が今どのように働いているのかを丁寧に把握します。

  • 働く環境(人間関係・設備・制度)
  • 評価制度の公平性
  • スキルアップの支援体制
  • 組織文化や風通し

表面的な数字だけではなく、ヒアリングやアンケートなどを活用して「現場の実感値」を確認することが大切です。

2. 従業員満足度(ES)の阻害要因を取り除く

環境面の整備は、モチベーションの安定に直結します。

たとえば、

  • キャリアパスが見えない
  • 意見が届かない風土
  • 不公平感のある人事評価

こうした問題に真剣に向き合うことが第一歩です。

3. 顧客満足度(CS)向上に連動させる

従業員の満足度が高まれば、自然とサービス提供の質が上がり、顧客満足度も上がります。

ここで注意したいのは、ES向上は“自己満足”ではなく、最終的に顧客へ価値が返っていく構造になっている必要があるということです。

4. 循環を生み出し「儲かる好循環」に育てる

ES→CS→利益→さらにES向上というプラスの循環が回り始めると、企業は持続的成長をしやすくなります。

これがサービスプロフィットチェーンが目指す「成長のしくみ」です。

サービスプロフィットチェーンを応用したビジョン策定の考え方

サービスプロフィットチェーンを応用したビジョン策定の考え方

サービスプロフィットチェーンの考え方を使ってビジョンを考える方法を整理していきます。

1. ビジョンの中心に「誰を幸せにしたいか」を据える

多くの企業ビジョンは「売上」「シェア」「利益」などの経済指標になりがちです。

しかしSPCでは、それらはあくまで結果に過ぎません。

本来のビジョンは、

  • 社員にとってどんな職場でありたいのか
  • 顧客にとってどんな存在になりたいのか

この2つを同時に描くところから出発します。

2. 内部(社員)と外部(顧客)の両輪をセットで考える

SPCの特徴は、内外のバランスを同時に整えることです。

  • 社内の「働きやすさ」と「やりがい」
  • 社外の「満足度」と「信頼感」

ビジョン策定の際は、両方の要素を含むように設計すると、一気に現実感が増します。

3. ビジョン達成のための循環設計を描く

ビジョンを作る際に重要なのは「どうやって実現するか」を構造的に描いておくことです。SPCはその構造を提供してくれます。

  1. 社員育成に力を入れる
  2. サービス品質が向上する
  3. 顧客が定着する
  4. 収益が安定する
  5. 社員への投資ができる

この成長サイクルを前提に、ビジョンを「会社全体の成長のしくみ」として整理できます。

4. 長期ビジョンと短期施策を分けて整理する

SPCの考え方をベースにしたビジョンは、多くの場合「じっくり時間をかけて育てるビジョン」になります。

だからこそ、

  • 長期ビジョン(数年先のありたい姿)
  • 短期施策(今すぐ手を付ける改善項目)

セットで言語化しておくと、現場の納得感が高まります。

利益より先に「環境を整える覚悟」が成長のカギ

利益より先に「環境を整える覚悟」が成長のカギ

サービスプロフィットチェーンは、短期利益を追う経営から抜け出し、「人を起点にした成長モデル」を描くための有効なフレームワークです。

このシンプルで普遍的な循環を、ビジョンとして描き、実際に仕組み化していくことが、企業を長く強くしていきます。

昨今の言葉で言うならば、インナーブランディングに近いかもしれません。

このように、ビジョンにおいても将来や利益だけを見るのではなく、内側から考えていくことが重要になります。

弊社では、ビジョンブラッシュアップ研修をおこなっています。

「ビジョンが機能していない」
「ビジョンが自社と合っていないのではないか?」

上記のようにお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

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株式会社comodo
石垣敦章(イシガキ ノブタカ)

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