なぜヒアリング重視の営業はときに失敗するのか
お客様のニーズを把握するために、営業はついあれこれヒアリングします。ヒアリングが大事ということは間違いないと思います。お客様の得たい成果は。どんなビジョンを持っていますか。どんなことに悩んでいますか。中期経営計画は?。その後さらに専門用語で根掘り葉掘り・・・
営業としては押し付け営業にならないために、きっちりお客様の状況を把握し、最適な提案をしてあげたいという気持ちがあるのでしょう。
営業は毎日何人もの人と、自分の得意な専門分野について話しています。そのため、知識も経験も豊富です。ですがお客様が新しい部署に異動してきたばかりだったとしたら、「専門家じゃないしそんなに聞かれても尋問ですか?」と嫌われかねません。
お客様は一部の専門的なことだけを扱っているわけではありません。人事でしたら、教育のことだけを考えているのではなく、人事制度、採用、労務などいろいろなことに時間を割かなければなりません。教育については全仕事の1%くらいしか時間を割けない状況で、これから検討開始という状況だったら根掘り葉掘りは尋問です。
・貴社のハイパフォーマーはどのような行動をとっていますか。
・その行動は他の方でも再現可能ですか。
・そのハイパフォーマーは社内に何%いますか。
・そのハイパフォーマーが現在8%なら、来季15%にすると業績へのインパクトはどのくらいになりますか。
人事からすれば「知らない私がいけないんですかね?」「もういいですあなたとは仕事を共にすることはなさそうです」となってしまいます。
情報を出しながらの対話営業
仮に上記の流れで進めるのだとしたら、ハイパフォーマーの行動分析でこんなやり方をすると見つけやすいです。営業平均を算出して、ハイパフォーマーとの差を埋めていくと、売上にもこれだけ影響するかもしれませんね。という提言をする。他にもこんなやり方で成功した会社の事例もあります。などと話をして具体的な進め方が記された提案書をつくる。この流れの方がお客様にパートナーとして認識されることもあるはずです。
お客様のことなのだから、聞けばなんでも知っていると思うと、お客様に失礼な態度をとりかねません。朝から晩まで年中同じことを考えている専門家ならば、いろいろな情報に精通していて当たり前です。成功につながる話題をワイワイガヤガヤ話し合いながら「共に見つけ出す」スタンスの方が、お客様も楽しいですし、早く成功につながっていきます。
関係性は時に時間が必要
そもそもヒアリングして、ありきたりな提案をし互いに成功するのでしょうか。初回訪問でヒアリング。2度目の訪問で提案して受注ということもありえます。ただそれはたまたまタイミングが熟していたからではないでしょうか。まだ提案しクロージングするには段階が早いとすれば下記レベニューモデルの「育成」フェースが必要になります。お客様からすればまずどんな情報を揃えればよいのか。そもそもどんな判断基準を持てばいいのか。業界ではどんなことが流行っているの。結果うちには何が向いてるの。など、まだまだ情報収集段階です。そのときに必要な情報をタイミングよく教えてくれる企業には好意を抱きます。
レベニューモデルでお客様がどこのフェーズか確認する
レベニューモデルはマーケティングが認知拡大し、インサイドセールスがテレアポやメールでアポを取得し、営業が受注。サービスご利用後、カスタマーサクセスがサポートしていく流れです。この中で、情報収集段階にある会社はマーケティングやインサイドセールスが顧客に情報提供をしていく段階にあります。ホワイトペーパー、ブログ、ebook、無料セミナーなどでお客様が営業と会う前に判断できる状態になります。お客様が自社の発信するコンテンツ情報で、どこまで関係性ができているかにより、営業の対応方法は変わるはずです。
もしお客様が初期の検討段階にあるときに、営業が訪問した場合、適宜タイミングにあったコンテンツで意思決定のサポートをしていけばいいのです。
そうすることで「ヒアリングという名の尋問」をせずに、お客様との関係を導入後のカスタマーサクセスにうまくつないでいくことができます。
お客様へ即ヒアリング、即提案が失敗するのはタイミングが合わなかったからということが多いです。しかしタイミングではなかったからといって、そのまま営業せずに何もしないでいると競合他社に負けます。依頼するタイミングではなかったとしても情報収集をする段階なのであれば、適宜、段階にあったコンテンツでお客様を支援していくことで、意思決定時にwin-winの状態で最終プレゼンに望めるはずです。
ぜひ、いまどこの段階かを把握し、お客様に適した対応でパートナーになることを目指していきましょう。