事業環境が目まぐるしく変化する中で、企業が競争力を維持・強化するには、事業構成の見直しが不可欠です。
そのためのフレームワークとして有効なのが「アドバンテージマトリックス」です。
本記事では、「アドバンテージマトリックス」のフレームワークの基本的な仕組み、活用方法、さらに企業ビジョンとの組み合わせについて詳しく解説します。
アドバンテージマトリックスとは?
アドバンテージマトリックスは、ボストン・コンサルティング・グループが提唱したフレームワークで、各事業の経済性を分析するためのツールです。
このフレームワークでは、事業を以下の2つの軸で評価し、それぞれのポジションに基づいて分類します。
業界の競争要因の数 | 業界内で競争を左右する要素(規模の経済、ネットワーク効果など)がいくつあるかを示す指標 |
優位性が構築できる可能性 | 自社が競争優位を確立できる可能性の大きさを示す指標 |
これらの軸を基準に、事業を以下の4つのカテゴリに分類します。
特化型事業(競争要因が少数・優位性が高い) | 競争要因が限られた中で自社の強みを活かせる分野 |
規模型事業(競争要因が少数・優位性が低い) | 競争要因が少ないものの、規模の経済やシェア拡大が重要となる分野 |
手詰まり型事業(競争要因が多数・優位性が低い) | 他社との差別化が難しく、収益性の改善が期待しにくい分野 |
分散型事業(競争要因が多数・優位性が高い) | 多くの競争要因が絡む中で優位性を発揮できる分野 |
アドバンテージマトリックスを2つの軸で評価する方法
アドバンテージマトリックスでは、まず各事業の「業界の競争要因の数」と「優位性が構築できる可能性」を明確にしなければなりません。
それぞれを分類する際の考え方について、解説します。
「業界の競争要因」では
- 価格競争力
- 規模の経済
- 製品の差別化
- ブランド力
- 流通網の強さ
などが含まれます。
これらの要因を整理することで、業界の競争構造が明確になり、事業の特性が浮き彫りになります。
「優位性が構築できる可能性」では、企業内部の強みや弱みを分析します。
たとえば
- 自社が持つ技術力
- コスト競争力
- 独自のマーケティング戦略
- 顧客基盤の強さ
などを考慮して、アドバンテージマトリックス上に配置します。
アドバンテージマトリックスを活用した戦略立案方法
アドバンテージマトリックスでは、事業を4つのカテゴリに分類することで、それぞれに最適な戦略を立案できます。
以下に、各カテゴリごとの具体的な戦略例を挙げます。
特化型事業
競争要因が少なく、自社が優位性を発揮できる分野です。
たとえば、特定の技術やノウハウを活かした製品やサービスが該当します。
この場合、さらなる専門性の強化や、既存顧客との関係構築を深めることが鍵となります。
また、市場ニーズを的確に捉えた研究開発や新製品投入を加速することで、競争優位をより確固たるものにできるでしょう。
規模型事業
競争要因が少ない一方で、規模の経済が重要な分野です。
たとえば、製造業やインフラ事業では、規模を拡大することでコストを削減し、利益率を向上させることが求められます。
この場合、効率化のための設備投資や、生産性向上を目的としたプロセス改善が重要です。
さらに、マーケットシェアを増やすための積極的な販売戦略や提携も有効でしょう。
手詰まり型事業
競争要因が多く、かつ自社の優位性が低い事業です。
このカテゴリは最も戦略が困難な部分ですが、短期的な利益を生む見込みがない場合は撤退を検討する必要があります。
一方で、優位性を構築する余地があると判断した場合は、リソースを集中投入し、状況の改善を目指します。
ここで重要なのは、感情的な判断を排除し、冷静にデータに基づいて意思決定を行うことです。
分散型事業
競争要因が多いものの、自社が優位性を発揮できる事業です。
このカテゴリでは、収益性を確保するために、規模の拡大を求めるのではなく、ニッチな市場で高付加価値のサービスや製品を提供する戦略が効果的です。
また、競合他社との差別化を図るために、独自のブランド戦略やプレミアムサービスの導入が有効といえるでしょう。
アドバンテージマトリックスとビジョンの融合
アドバンテージマトリックスは現状分析や戦略立案に優れたツールですが、企業ビジョンと組み合わせることでさらに効果を発揮します。
短期的な経済性だけでなく、ビジョン達成に向けた長期的な方向性を示す指針としても活用できるからです。
特に、「手詰まり型事業」であってもビジョンとの整合性が高い場合、収益性の改善を目指した戦略的投資が合理的な選択となるケースがあります。
上手くビジョンと組み合わせれば、大きな効果を得られるでしょう。
アドバンテージマトリックスとビジョンで企業の方向を明確にする
アドバンテージマトリックスは、事業構成を見直し、経済性の観点から戦略を立案するための強力なツールです。
また、企業ビジョンと組み合わせることで、より包括的かつ持続可能な事業戦略を構築できます。
現状の評価だけでなく、未来志向の戦略を実現するために、このフレームワークをぜひ活用してみてください。
アドバンテージマトリックスを利用してビジョンを見直す場合には、弊社の「ビジョン・ブラッシュアップ」研修をご検討ください。
あらゆる観点から、利益を伸ばすためのビジョンを再構築します。
株式会社comodo
石垣敦章(イシガキ ノブタカ)